1.毎日の食生活を楽しむために大切な、歯の健康

歯の健康と口腔ケア

2021.02.15 更新

健やかな生活を送るうえで、日々の食事はとても大切なもの。ただ栄養や水分を補給するというわけではなく、食べる楽しみを味わったり、食べる時間そのものを楽しんだりと、日々の生活を豊かにしてくれるものです。毎日、無理せず楽しく食べたい。その気持ちを支えてくれるのが「健康な歯」という存在です。

ただ、口の中には悪いものも良いものも含めて、さまざまな細菌が存在します。丈夫な歯を保つため、毎日の食事をずっと楽しむために、どのようなケアをしていけばいいのでしょうか?

長年、口腔感染症の研究をされている鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘先生に、口腔細菌がからだにどのような影響を与えるのか、さらに、大切な口腔ケアのコツについてお話を聞きました。

食事を楽しむには、口腔ケアがとても重要です

毎日を健やかにすごすためには、食事の時間はとても大切です。からだにも心にもいい影響を与えますし、歯そのものを丈夫に保つうえでも重要なこと。

「口腔ケアは、日々の生活を送るうえではもちろん、これからの健康を支えるためにも、とても重要視されています。自分の歯の健康を保ち、しっかり咀嚼するためには、正しい口腔ケアは欠かせません」

国の施策として、2000年に厚生労働省が始めた「21世紀における国民健康づくり運動」(健康日本21)では、目標設定を掲げた9分野のひとつに「歯の健康」が設けられました。さらに、歯周病が糖尿病やがんなどと並ぶ生活習慣病として位置付けられています。

また、2014年日本老年医学会が提唱した「フレイル」においては、「オーラルフレイル」も問題になっています。これは、口に関するささいな機能の低下から、摂食嚥下障害へと広がるものです。

きちんと口腔ケアを続けることが、自分の歯で食べる楽しみを味わうこと、食事の時間を楽しむことにつながるのです。

口の中には無数の細菌が存在します

では、実際に私たちの口の中は、どのような状態になっているのでしょうか?

「口腔内にはたくさんの細菌が存在します。ただ『細菌』とひとことで言っても『善玉菌』や『悪玉菌』、『日和見菌』と呼ばれるように、身体を守ってくれるいい細菌もいれば、悪い影響を与える細菌もいます。その数は、500を超えると言われていて、そのうちの約100種類の悪玉菌が虫歯や歯周病の原因となっています」

悪玉菌が原因で虫歯や歯周病になった場合、放置しておいたり、口腔ケアをきちんとしなかったりすると、悪玉菌はさらに増殖してしまいます。

「また、虫歯や歯周病が原因で歯が弱り、うまく咀嚼できなくなることもあります。噛めないと、殺菌作用のある唾液の分泌量が減り、口腔内の汚れを洗い流せなくなってしまう。唾液が減って乾燥した状態では、さらに悪玉菌が増殖してしまいます」

悪玉菌を放っておくと、口腔内の状態が悪くなり、さらに悪玉菌を増やす原因になるという悪循環になってしまうのです。

悪玉菌は、虫歯や歯周病の患部に入り込み、血液中に流れ込んで全身へ広がり、さまざまな疾病につながることもあるのだそう。

「口の中を善玉菌ばかりにするのが理想ではありますが、なかなかできません。一般的には7割以上を善玉菌や日和見菌で占めていれば健康な状態と言っていいでしょう。悪玉菌がいても増えすぎなければいいのです」

ふだんは、歯を磨くなどの口腔ケアで悪玉菌を減らすことともできますし、口腔内の抗体の働きで悪玉菌やウイルスは排除できています。必ずしも疾病につながるわけではありません。きちんと清潔な状態を保っていれば、歯だけでなく、からだの健康を守ることにつながるというわけです。

次回は、実際に悪玉菌がからだにどのような影響を与えているのか、そのメカニズムとリスクについてのお話です。

小学館の運営するサライ.jp内に、おいしい健康との特集ページ『いのちを守る食と暮らし』があります。コロナ禍を経験した私たちが、人生100年時代をどう健康に楽しく生きていくのかを考えていきます。
こちらにも、花田先生をはじめとする医師のインタビュー記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。

https://serai.jp/save-life
取材・文/おいしい健康編集部
写真/小山志麻