1. 食事改善に困っている方のために

糖尿病

2024.07.10 更新

厚生労働省より発表された資料によると糖尿病とその予備群は約2,000万人と推測。年代としては70歳以上が占める割合が高く、超高齢化社会の日本においてその数字は今後も増えていくといわれています。

そんな状況と日々向き合っているのが神奈川県横浜市にある高田中央病院の荏原 太先生。「糖尿病の予防や治療に欠かせない“食事と運動”をゲーム感覚で取り組めるように」と健康習慣アプリを取り入れるなど、柔軟な発想で「糖尿病のある方と共に歩むこと」を目指しています。 明るく創造力豊かな荏原先生から、楽しみながら生活習慣を整え、病を乗り越えるヒントを伺いました。

第1回は、糖尿病の予防の大切さについてのお話をお聞きします。

“自炊の回数が増えた”などの健康行動に注目しています

糖尿病とは、膵臓から出されるインスリンというホルモンが充分に働かないことで、血中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう疾患です。血糖値が高い状態が続くと血管が傷つき、心臓病や腎不全、足の切断といった合併症を引き起こす原因となります。

糖尿病には大きく分けて1型糖尿病、2型糖尿病があります。要因ははっきりしていないものの、遺伝因子とともに生活習慣・外部要因などが関与して発症すると考えられているのが2型糖尿病です。

「糖尿病の一番の問題点は、症状が出にくいことなんです。健康診断に行かずに糖尿病になったことに気づかず、症状が出たころには悪化してしまうことも。それを防ぐために、潜在的に糖尿病のある方、予備群の方々に、より光を当てたいと思っています。僕ら医師は成功例ばかりを追う傾向にありますが、食事改善に失敗して困っている人、病院に行っても本音を言えない人などにフォーカスしなくては、と。そのためには病院に行くことをご自身で納得し、『来てよかった』と感じてもらえれば嬉しいです」

そう話す荏原先生は、健康診断などでの検査結果の数値にとらわれすぎないようにしているといいます。

「数値のみで判断するのは医師としてはラクですよね。数値が悪いから薬を増やしましょうとか。検査データは必要ではありますが、受け取る側としては成績表をもらうような気分になり、数値が悪ければ気持ちが萎えてしまう。それよりも、自炊する数が増えたといった“健康プラス行動″を数値化したほうが、皆さんのモチベーションが高まると思っています」

治療も仕事も生活も大切にできるように

「健康プラス行動」に加えて、仕事や家族との関係、本人の精神状態など、生活全般に目をむける必要があります。

「例えば、お母さんが亡くなり、精神的に辛くて食事の管理がうまくできなかったなど、人生ではいろいろなことが起こります。生活に対する悩みや不安を聞いて受け止め、少しでも気分が楽になる手段がないかを共に考えていきたいと思っています。

糖尿病のある方々は治療のために生きているわけでありません。多くの場合、生活していくためには仕事をしなくてならない。治療と仕事を考慮した両立支援をしていけたらと考えています。大切なのは糖尿病の初期の段階から医療が関わること。例えば、ビル工事など高いところで作業している方が低血糖になると、ふらついて事故につながりかねません。そういった悲しい出来事がご本人にもご家族にも起きないようにする。避けるためには早期から対策することが大切です」

次回は、荏原先生が提案する楽しみながらできる糖尿病の予防についてのお話です。

撮影/相馬ミナ
取材・文/梅崎なつこ
編集/おいしい健康編集部

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