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2020.4.6 更新

「糖尿病」とはどんな病気ですか?

筑波大学 内分泌代謝・糖尿病内科

准教授 矢作直也先生

私たちにとって身近な病気といえる「糖尿病」。そもそもどのような病気でしょうか。

患者数は過去最多。300万人を超えています

厚生労働省の調査※1では、糖尿病の患者数は328万人を超え、過去最多の人数を記録しています。

また、糖尿病が強く疑われる人(糖尿病有病者)と糖尿病の可能性を否定できない人(糖尿病予備群)はそれぞれ約1000万人、合わせて約2000万人と推計されています※2

糖尿病とは、血糖値が高い状態が続く病気です

食事から摂る栄養素のうち、炭水化物と脂質、たんぱく質の3つは「3大栄養素」と呼ばれ、消化・吸収、代謝を経て、エネルギーを産み出します。

炭水化物である糖質は、体内で消化され、ブドウ糖に分解されて血液に入ります。分解されたブドウ糖(血糖)は、インスリンというホルモンの働きなどによって体の細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。

インスリンは、血糖値(血液中のブドウ糖の量)を下げる作用がある唯一のホルモンで、このインスリンの働きに問題が起こると、糖代謝に異常をきたし、血糖値の高い状態が続いてしまいます。

糖の代謝に異常が起こり、血糖値の高い状態が続く病気が糖尿病なのです。

糖尿病患者の10人に9人以上が2型糖尿病

糖尿病は、発症の成因などによって大きくわけて2つの種類に分けられます。

ひとつ目は「1型糖尿病」です。すい臓のインスリンを出す細胞が自己免疫により壊されてしまう病気で、インスリンをほとんど出すことができません。血糖値が高くなり、注射でインスリンを補う治療が必要となります。糖尿病患者数に占める割合は、約20人に1人です※1

一方、糖尿病患者の10人中9人以上の割合を占めるのが※1、「2型糖尿病」です。インスリンが分泌されているものの量が十分ではない(インスリンの分泌低下)、働きが悪く血糖値が下がらない(インスリン抵抗性)など、インスリンの働きに影響をきたしている状態です。肥満や運動不足、食習慣の乱れや食べ過ぎなどの生活習慣の要因が多く、遺伝的な要因でも発症します。

はじめは自覚症状が少なく、健康診断で指摘されて初めて気づくケースが多いです。薬やインスリン注射による治療を行うこともありますが、まずは適切な食事と運動が重要です。

そのほかに、糖尿病以外の病気や治療薬の影響で血糖値が上昇し、副次的に糖尿病を発症する場合があります。また、「妊娠糖尿病」は、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖代謝異常で、まだ糖尿病には至っていない血糖の上昇をいいます。比較的軽い糖代謝異常でも、おなかの赤ちゃんに影響を与えやすいため、特別な配慮が必要です。出産をすると血糖値は元に戻る場合がほとんどですが、将来糖尿病になりやすいといわれています。

糖尿病は国民病ともいわれ、なかでも2型糖尿病の占める割合は高いです。

日ごろから体重を測ったり定期的に健康診断を受けたり、自身のからだの変化に気づけるようにしましょう。

<参考>『糖尿病診療ガイドライン2019』編・著 日本糖尿病学会(南江堂)

*1 厚生労働省「患者調査」2017年

*2 厚生労働省「国民健康・栄養調査」2016年

文/おいしい健康編集部









筑波大学
内分泌代謝・糖尿病内科
准教授 矢作直也先生

筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科准教授。東京大学医学部卒。日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院特任准教授を経て2011年より筑波大学准教授(ニュートリゲノミクスリサーチグループ代表)。医師として糖尿病やメタボリックシンドロームの診療にあたりつつ、研究者としてニュートリゲノミクス研究を推進。薬局と医療機関との連携による糖尿病早期発見プロジェクト「糖尿病診断アクセス革命」の展開など活動は多岐にわたる。著書に『遺伝子制御の新たな主役 栄養シグナル』(編集;2016年、羊土社) など。

筑波大学 内分泌代謝・糖尿病内科 准教授 矢作直也先生

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