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2020.4.6 更新

栄養素のバランスも重要です

筑波大学 内分泌代謝・糖尿病内科

准教授 矢作直也先生

前回は、適正なエネルギー量についてお話をしました。

自分の適正エネルギー量がわかると食事の具体的なイメージがつきますが、ただ、よくあるのは「カロリーさえ超えなければ何を食べても大丈夫」と、エネルギー量だけを気にして食事をしてしまうこと。

エネルギーをどの栄養素からどんなバランスで摂るかも大切です。

エネルギーになる3つの栄養素

からだに欠かせない栄養素のうち、エネルギー源となるのは、たんぱく質と脂質、炭水化物です。

たんぱく質(Protein)は、1gあたり4kcal。肉や魚、牛乳、チーズなどの動物性のものと、豆腐や納豆などの植物性のものがあります。

脂質(Fat)は、1g当たり9kcal。なたね油やごま油などの植物油、バター(動物性油脂)やマーガリン、肉や魚の油(脂)もあります。

炭水化物(Carbohydrate)は、1g当たり4kcal。糖質と食物繊維の総称です。ご飯やパン、麺類などの穀類、いもやでん粉類のほか、はちみつや砂糖および甘味類、果実などにも含まれます。

これら3つの栄養素には、理想の摂取バランスがあります。

エネルギーの代謝、栄養素の摂取バランスが関係します

血糖値を下げる働きのインスリンは、糖の代謝だけではなく、脂質やたんぱく質の代謝などにも関わりがあります。

そのため、たんぱく質、脂質、炭水化物のエネルギーになる栄養素をどんな配分で摂るかはとても重要です。この摂取比率は、食事の理想的なバランスの指標として「PFCバランス」と呼ばれています。

健康な人と少し異なる2型糖尿病のPFCバランス

健康な成人のPFCバランスは、1日の摂取エネルギーのうち炭水化物で50〜65%、たんぱく質で13〜20%、脂質は20〜30%(飽和脂肪酸7%以下)※1

一方で、糖尿病はさまざまな慢性疾患の基盤となることから、また別の目安が設けられています※2

炭水化物を50〜60%に、たんぱく質は20%以下に、残りを脂質としています。ただし、脂質が25%を超える場合は、魚や植物の油(脂)に含まれる多価不飽和脂肪酸を増やすなど、脂肪酸の構成には気をつけます。

炭水化物 50〜60%エネルギー

たんぱく質 20%エネルギー以下

脂質 残りを脂質から摂る

また、炭水化物に含まれる食物繊維は、炭水化物の摂取量にかかわらず、1日20g以上摂ることが推奨されています。

身近な食材がどの栄養素に分類されているかを知っておくと便利です。

<参考>『糖尿病診療ガイドライン2019』編・著 日本糖尿病学会(南江堂)

*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準 2020年版」

*2 日本糖尿病学会の食事療法に関する提言(2013年)

文/おいしい健康 編集部









筑波大学
内分泌代謝・糖尿病内科
准教授 矢作直也先生

筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科准教授。東京大学医学部卒。日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院特任准教授を経て2011年より筑波大学准教授(ニュートリゲノミクスリサーチグループ代表)。医師として糖尿病やメタボリックシンドロームの診療にあたりつつ、研究者としてニュートリゲノミクス研究を推進。薬局と医療機関との連携による糖尿病早期発見プロジェクト「糖尿病診断アクセス革命」の展開など活動は多岐にわたる。著書に『遺伝子制御の新たな主役 栄養シグナル』(編集;2016年、羊土社) など。

筑波大学 内分泌代謝・糖尿病内科 准教授 矢作直也先生

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