4. 部活動のようなチームワークで、治療に取り組む

糖尿病

2024.07.10 更新

厚生労働省より発表された資料によると糖尿病とその予備群は約2,000万人と推測。年代としては70歳以上が占める割合が高く、超高齢化社会の日本においてその数字は今後も増えていくといわれています。

そんな状況と日々向き合っているのが神奈川県横浜市にある高田中央病院の荏原 太先生。「糖尿病の予防や治療に欠かせない“食事と運動”をゲーム感覚で取り組めるように」と健康習慣アプリを取り入れるなど、柔軟な発想で「糖尿病のある方と共に歩むこと」を目指しています。 明るく創造力豊かな荏原先生から、楽しみながら生活習慣を整え、病を乗り越えるヒントを伺いました。

第4回は、先生が大切にしている治療のうえでのコミュニケーションについてお聞きします。

患者さんから教えてもらうことばかりなんです

治療をするうえで、コミュニケーションを何よりも大事にしている荏原先生は、診察中の会話から得るものばかりだと話します。

「『便利な食事管理アプリを見つけたよ』『歩数計を使って痩せたので先生にプレゼントします』といったように、皆さんとのやりとりで情報をもらえたり、癒されたりしています。

臨床にたずさわる医師のプラスポイントは、いろいろな年齢や職業の方たちの話が聞けること。働き方やライフスタイルの中でどのような工夫で治療して病気とも向きあっているのかなどを教えてもらうことで提案的治療の引き出しが増え、“その仕事って、こういうところが大変なんだよね”というような話に広がると、糖尿病のある方々のことをより一層深く知ることができます」

良好なコミュニケーションをとらなければわからない生活習慣も多く、なにげない会話のなかにこそ本音が隠れていたりもするのでしょう。荏原先生自身がコミュニケーションを大切に楽しんでいると、自然と会話も弾むに違いありません。

患者さんの本音は診察の最後にぽろりと出るものです

診察のなかで一番意識していることは何ですか?と伺うと

「笑いをひとつ必ずとることです(笑)。それと、大事なのは、皆さんの本音は、去り際にポロリと出ることを意識するということです。診察の最後に“先生、病気と関係ないんですけど質問していいですか?”とおしゃいます。そこに本音があるんですよね。その言葉を逃さないようにする。医師が目の前にいる方々の状態を自分のこととして捉えられるかどうかも、とても大切です。その点、自分は血糖値が高めで睡眠時無呼吸症候群なので、自分のことのように感じられてラッキーだったと思います(笑)」

診察室では電子黒板を使いながら生活改善のアドバイスを行うなど、さまざまなアプローチで糖尿病のある方達を支えている荏原先生。

「皆さんの状態や環境によって、やり方は変えています。細かい説明を受けるのが苦手なおばあちゃんだったら、何もしなくていいからねと安心させてあげる。『オレオレ詐欺、大丈夫ですか?』と生活を気にかけてあげたりもします。糖尿病のある方々とは長いお付き合いになっているので、転職したり、離婚したりといろいろな人生の変化があります。いいことも悪いことも共有して、僕だけじゃなく、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、検査技師、事務スタッフも一緒に部活みたいにチームで乗り越えていく感覚です」

次回は荏原先生のこれまでの歩みについてのお話です。

撮影/相馬ミナ
取材・文/梅崎なつこ
編集/おいしい健康編集部

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