5. 医学生時代の苦労が糧となって、今がある

糖尿病

2024.07.10 更新

厚生労働省より発表された資料によると糖尿病とその予備群は約2,000万人と推測。年代としては70歳以上が占める割合が高く、超高齢化社会の日本においてその数字は今後も増えていくといわれています。

そんな状況と日々向き合っているのが神奈川県横浜市にある高田中央病院の荏原 太先生。「糖尿病の予防や治療に欠かせない“食事と運動”をゲーム感覚で取り組めるように」と健康習慣アプリを取り入れるなど、柔軟な発想で「糖尿病のある方と共に歩むこと」を目指しています。 明るく創造力豊かな荏原先生から、楽しみながら生活習慣を整え、病を乗り越えるヒントを伺いました。

最終回は、先生の医学生時代のことや、これまでの歩みについてお聞きしました。

私自身、薬の飲み過ぎで体調が崩れてしまった経験がありました

父親が医師ということで、荏原先生にとって医療の道に進むことは自然の流れでした。東京慈恵医科大学に進学したものの、医学部5年生のときに心身のバランスを崩してしまったのだそう。

「もう普通の生活には戻れないのかと思うときもありました。当時、たくさんの薬を飲まなくてはいけないのが辛くて。そんなときにある新任の教授から“君は薬を飲みすぎているね。減らして復学しなさい”とアドバイスとフォローをしていただき、復学することができました。

さらに、友人たちが勉強を教えてくれて、助けを借りながら医師になることができた。苦労が続いた時間でしたが、そのときに出会った臨床心理学の先生と仲良くなったことで、カウンセリングや家族心理療法の勉強をさせてもらいました。その経験がなければ、今頃は鼻持ちならない医者になっていたかもしれない(笑)」

そんなふうに医大生のころを振り返ります。この時の経験が、のちに医師としての骨格の一部になったのかもしれません。

食の大切さを幅広く伝えていきたいと思っています

投薬の難しさや怖さを、身を持って体験したことが今に生かされているといいます。

「先日、復学したときに助けてくれた友人が、“あのときの荏原の様子を見て、今でも薬はあまり出さないようにしている”と言っていたんですよ。はたから見ても、普通じゃなかったんでしょうね。薬はやはり使い方や人によってはリスクがあります。依存症の問題もあります。

食事と運動という安全で確実な方法をメインに、予防と治療に取り組むのが僕のスタイル。添加物が入っていない自然なものを自然なかたちで食べていく。人問の味覚と食事スタイルは3歳までに決まるといわれています。この病院へ来る方々だけでなく、小さな子供たちにも食の大切さが伝わるように、今後は力を注いでいきたいと思っています。同じベクトルで未来に向かっている『おいしい健康』と共に歩んでいきたいですね」

撮影/相馬ミナ
取材・文/梅崎なつこ
編集/おいしい健康編集部

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: sp_100recipe.jpg
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: sp_ms-2weeks.jpg