4.専門家に頼るべき口腔ケアとは?

専門家による口腔ケア

2021.03.08 更新

健やかな生活を送るうえで、日々の食事はとても大切なもの。ただ栄養や水分を補給するというわけではなく、食べる楽しみを味わったり、食べる時間そのものを楽しんだりと、日々の生活を豊かにしてくれるものです。毎日、無理せず楽しく食べたい。その気持ちを支えてくれるのが「健康な歯」という存在です。

ただ、口の中には悪いものも良いものも含めて、さまざまな細菌が存在します。丈夫な歯を保つため、毎日の食事をずっと楽しむために、どのようなケアをしていけばいいのでしょうか?

長年、口腔感染症の研究をされている鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘先生に、口腔細菌がからだにどのような影響を与えるのか、さらに、大切な口腔ケアのコツについてお話を聞きます。

前回は、自宅でできる口腔ケアについてお聞きしました。歯磨きや舌磨きなどのほかには、歯科医や歯科衛生士などの専門家にしかできないケアもあります。第4回は専門家のもとで行うべき口腔ケアについてのお話です。

定期的に歯石やバイオフィルムの除去をしましょう

丈夫な歯を保つには、自分で行う歯磨きのほか、歯科医院での定期的なケアも重要です。そもそも、虫歯は早期発見の方が治療の痛みも軽減できますし、何より歯磨きでは除去できない「歯石」という存在もあります。

「歯石は、歯磨きだけでは取り除くことはできないので、歯科医か歯科衛生士に除去してもらいましょう。歯石を放っておくと、デンタルプラークという歯垢が付着しやすくなるんです。これは歯周病や口臭の原因に。半年から1年に1回を目安に検診に行き、歯石を除去することをおすすめします」

歯石は、口腔内で発生した「バイオフィルム」というものが元になります。歯の表面に膜を張るように付着するもので、これ自体が歯周病の原因になるうえに、唾液の中のカルシウムやリン酸などが沈着すると石灰化して歯石になってしまいます。

「歯石になる前の『バイオフィルム』の段階で取り除くことも大切です。バイオフィルムは粘着性が高く、歯ブラシでこするだけでは取りきれません。歯科で専用のクリーニングをし、殺菌する必要があります」

バイオフィルムが歯石になるまでの期間は3ヶ月ほど。その間に歯科でクリーニングをすれば安心というわけです。

口腔ケアの方法は、日々進化しています

さらに、花田先生自身が開発した「3DS除菌」という予防法もあります。これは特に第2回のお話に出てきた「菌血症」の治療に役立つ方法です。

「『3DS除菌』は、バイオフィルムを除去した後に、さらに悪玉菌を除去するための方法です。マウスピース状のトレーに殺菌消毒剤を塗り、朝晩5分ほど歯に装着するだけ。からだにいい影響を与える善玉菌はしっかり残すことができる予防法で、歯原性の菌血症の予防に効果があります。もちろん、虫歯や歯周病の予防にも。今はまだ保険が適用されず、少々高額になってしまうので、早く保険診療になってくれたらと思っています」

先生自ら、毎日朝晩「3DS除菌」をしていて、その効果を実感していると話します。普段、先生が実践している口腔ケアについても教えてもらいました。

「朝起きたら、まず舌磨きをします。朝食後に歯ブラシと歯間ブラシで歯を磨き、出勤前に『3DS除菌』。昼食後、夕食後もそれぞれ歯磨きをして、寝る前にまた『3DS除菌』をしています。実際、効果を実証する実験に参加したのですが、私の血液中には細菌は存在しませんでした」

「3DS除菌」は、その予防効果が注目されていて、大学病院だけでなく、全国的に実施している歯科医院も増えてきています。このように、日々進化している新たなケアについて知ることも、予防の第一歩になります。

虫歯になっていなくとも、痛みや腫れがなくとも、歯科でのケアはとても大切。歯石やバイオフィルムを除去して除菌につとめることが、ひいてはさまざまな疾病を防ぐことにつながるからです。自身で行う口腔ケアに加え、定期的に歯科へ足を運んでクリーニングするようにしましょう。

次回は、新型コロナウイルスと口腔ケアの関係についてのお話です。

小学館の運営するサライ.jp内に、おいしい健康との特集ページ『いのちを守る食と暮らし』があります。コロナ禍を経験した私たちが、人生100年時代をどう健康に楽しく生きていくのかを考えていきます。
こちらにも、花田先生をはじめとする医師のインタビュー記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。

https://serai.jp/save-life
取材・文/おいしい健康編集部
写真/小山志麻