3.自宅でできる口腔ケアの注意ポイント

自宅での口腔ケア

2021.03.01 更新

健やかな生活を送るうえで、日々の食事はとても大切なもの。ただ栄養や水分を補給するというわけではなく、食べる楽しみを味わったり、食べる時間そのものを楽しんだりと、日々の生活を豊かにしてくれるものです。毎日、無理せず楽しく食べたい。その気持ちを支えてくれるのが「健康な歯」という存在です。

ただ、口の中には悪いものも良いものも含めて、さまざまな細菌が存在します。丈夫な歯を保つため、毎日の食事をずっと楽しむために、どのようなケアをしていけばいいのでしょうか?

長年、口腔感染症の研究をされている鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘先生に、口腔細菌がからだにどのような影響を与えるのか、さらに、大切な口腔ケアのコツについてお話を聞きします。

前回は、口腔内の菌や歯周病によってどのようなリスクがあるのか、そして、そのメカニズムについてお聞きしました。第3回は、実際にどのようなケアを行えば予防することができるのかを教えていただきます。まずは、自分でできる歯磨きの注意点とは何でしょうか?

歯ブラシの動かし方に気をつけましょう

多くの人にとって「歯を磨く」ということは、虫歯を予防するうえで、日常的に習慣として行なっていることでしょう。まず、歯磨きにおいては、正しく歯ブラシを動かすことが大切だと花田先生は言います。

「ただ歯の表面を磨くだけでは、悪玉菌の増殖を予防するのは難しいものです。きちんと毛先を歯の隙間に入れ、ブラシを横に動かすようにして磨いてください。以前は、上の歯は上から下へ、下の歯は下から上へ歯ブラシを動かす『ローリング法』という磨き方が推奨されていた時期もありました。当時は、歯磨き粉が歯のエナメル質を削ってしまう可能性があったからです。しかし、今の歯磨き粉は、タバコのヤニを取るためのものでなければ大丈夫ですから、ブラシをしっかり隙間に入れて横に動かすことを意識してください」

一晩だけでも、歯磨きをせずに寝てしまうと、口腔内では悪玉菌が繁殖してしまいます。第2回で教えていただいたように、悪玉菌が血液に入ってしまうと疾病につながるリスクになるので、広がる前に予防することが大切です。

「以前の研究で、移動する時間を計測したことがありますが、歯茎の内側から侵入した悪玉菌は、約90秒で上腕部の血管に到達しました。そして、60分後には上腕部からなくなり、他の部位へと進んでいたのです」

最近を増殖させない、血液へ侵入させないためには、朝・昼・晩と食後にしっかりとブラシを動かす歯磨きをしましょう。

舌磨きや歯間ブラシを使うことを習慣に

歯ブラシで磨くだけではなく、舌磨きや歯間ブラシを使うことも大切なこと。歯磨きのついでに行えばいいのでしょうか?

「舌を磨く際に歯ブラシを使うと傷つけてしまうので、専用のブラシを使ってください。舌は歯よりも肺などの臓器に近いですよね。舌についた菌が繁殖すると、誤嚥性肺炎につながることもあります。歯磨きと同じように習慣化するのをおすすめします」

また、歯間ブラシも、歯ブラシと同じタイミングで使うようにすれば、面倒にならずに歯間の掃除をすることができます。

「年齢を重ねると、どうしても歯と歯に隙間ができてきます。そこに食べカスが入ったままになると炎症を起こす原因になります。もちろん、菌の繁殖の元にもなりますね。隙間をしっかり掃除するには歯ブラシでは難しいので、歯間ブラシを使ってください。入りにくいところに無理やり入れ込む必要はありません。隙間のない人や歯間ブラシが入らない場所は、デンタルフロスがおすすめです。歯ブラシと歯間ブラシ、デンタルフロスは併用するようにしてください」

歯ブラシの動かし方に注意して歯を磨くこと、舌も歯間もきちんと専用のブラシで掃除すること。基本的な口腔ケアは、特別難しいことではなく、普段の生活の中でできることです。虫歯や歯周病だけでなく、生活習慣病の予防にもつながるのですから、ぜひきちんと習慣にしていきましょう。

次回は、専門家による口腔ケアについてのお話です。

小学館の運営するサライ.jp内に、おいしい健康との特集ページ『いのちを守る食と暮らし』があります。コロナ禍を経験した私たちが、人生100年時代をどう健康に楽しく生きていくのかを考えていきます。
こちらにも、花田先生をはじめとする医師のインタビュー記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。

https://serai.jp/save-life
取材・文/おいしい健康編集部
写真/小山志麻