8. 医師として、患者とどう向き合うか

医師の対応

2020.05.14 更新

小学校6年生のときに1型糖尿病にかかり、それがきっかけで医師をめざしたという市原由美江先生。現在は糖尿病専門の医師として活躍しています。1型糖尿病がどういう病気なのか、また、ご自身の病気がわかったきっかけやなぜ医師をめざすことになったのか、お話を伺うページです。

7.ほどよい運動『ピラティス』について」では、糖尿病患者さんが取り入れやすい運動のお話を聞きました。最後となる今回は、先生が自身の経験を生かしながらも、医師という立場からどのように患者さんと向き合っているのかお聞きします。

状態も状況も違うからこそ、共感しすぎないように

医師として同じ1型糖尿病の患者さんと向き合っているなかで、自身の経験を伝えることも多いのでしょうか?

「『うんうん、わかるよ』とライトに共感はしないようにしています。同じ患者でも、病気の状態や向き合い方も違えば、生活スタイルも異なります。あくまでも、医師としてアドバイスするように心がけています」

インスリンの量の決め方や、食事をどうするか、低血糖時の対応など、医師の立場から話すようにしているのだそう。

「辛い気持ちや大変さは理解できます。わかるからこそ、同じだと思わないようにしなければならないと思っています。患者さんは一人一人それぞれ違いますから」

それでもやはり、同じ患者として、大変なことを理解してくれる市原先生の存在は、心強いに違いありません。自分一人で頑張ろうとしている人や、素直に気持ちを吐き出せずにいる人には、本音が話せるよう、弱音を言えるように、寄り添う姿勢を大切にしているそう。

「今は医学の進歩で本当に糖尿病と付き合いやすい時代になりました。昔は、血糖値を計るのも大変でしたし、インスリンを打つのも大変でした。効きもよくなかったですし。でも、今は格段に進化しています。だからあまり落ち込まず、病気とうまくつきあっていってほしい。無理せず、自分に合った方法で体を大切にしていきましょう」

取材・文/長谷川華・おいしい健康編集部
写真/近藤沙菜