5.若い医師たちが志を持てる環境づくりを

腎臓病

2023.06.06 更新

初期段階では、痛みやむくみなどのサインがほとんどなく、症状が出たころには進行している、ということが少なくないのが腎臓病の特徴。「ものを言わない臓器」とよばれるほどなのです。

「腎臓疾患は“気づきにくい“というのが一番のネックなんです。健康診断で数値に何かしら問題があったら、まずは病院に行ってみる。早期発見により、対処できることが山ほどあることを知ってもらいたいですね」

そう話すのは腎臓内科医の菅野義彦先生。患者さんと向き合う現場だけでなく、医療従事者の働く環境を考えた組織作りにも携わる、医師の“当たり前“を覆す歩みを伺いました。

最終回は、先生が現在取り組んでいることや今後についてのお話です。

モチベーションを失いかけている医療従事者たちのために動いています

現在は外来での診察よりも病院全体の働く環境づくりに費やす時間が増えている菅野先生。

この数年、コロナ禍において医療従事者への負荷は高まるばかりで、医療現場から離れるドクター、看護師の方もいらっしゃいます。

「今や医療職がブラック業種になっているのが現状です。ニュースで流れているように、コロナ患者さんを担当している看護師のお子さんが保育園に行けないなんておかしい話です。僕は好きで医者になったわけではないけれど、今は本当におもしろい仕事だと思っています。銭金抜きで考えても、人類がつくった1、2を争ういい仕事だと自信を持って言えます。それが、『医者になんてならければよかった』と若い医師たちが思っている姿を見て、何とかしてあげたい。そんな思いで、衣装従事者、事務の職員を含めて、働きやすい環境づくりに力を注いでいます」

医療従事者の方々の心身が健康であることが、医療の質の面において欠かせないことです。

管理栄養士のレベルアップで効率的な医療体制が整うことを目指しています。

また、日本臨床栄養学会理事長である菅野先生は、管理栄養士の役割についても改革を試みています。塩分やたんぱく質などの調整が必要な腎臓病の患者さんにとって、日々の食事は腎機能を良好な状態に保つために大切なこと。そのために管理栄養士がどれだけ携わっているのか伺ってみるとーー。

「管理栄養士は食のプロフェッショナルではあるんですけど、近年、生活習慣病というすばらしい活躍の舞台を与えられたのに貢献できませんでした。もちろん、関わってはいたんですけど、管理栄養士の力によって生活習慣病が改善された例はほとんどないのです。そこで私が働く東京医科大学病院では、管理栄養士の教育にいっそう力を入れ、病棟と連携して患者さんとサポートできる体制を強化しています」

広い視野と柔軟な発想で医療の現場が健全に機能する仕組みをつくっている菅野先生。困難が多い時代だからこそ、そのフレキシブルさが未来を拓くきっかけになるのです。

取材・文/梅崎なつこ
編集/おいしい健康編集部

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