4.同性だからこそ見える女性ならではのストレス

女性の悩み

2021.11.02 更新

月経不順、生理痛、不妊、更年期、尿もれ……。女性のからだの悩みは、年齢ごとに変わっていくものです。ところが、いざ症状に直面したときにどの科で診てもらえばいいのかわからない……。そんな不安に応えようと東京の下町・木場で女性のための総合的な医院「東峯婦人クリニック」を開いたのが松峯寿美先生です。

不妊で悩んだ自身の経験をいかした不妊治療を始め、出産や産後ケアなど、女性にとって大事なライフイベントを支える、懐の深いホームドクター。トラブルがあった時には「心配しないで大丈夫!」という気風のいい言葉が、患者さんの心を落ち着かせる良薬にもなっています。キャリア50年以上のベテラン医師が見てきた出産、産後のこと、今だからこそ伝えたいことを伺いました。

前回は産後ケアについての詳しいお話を聞きました。今回は、女性医師である松峯先生だからこそわかる、心のストレスについてお聞きしました。

更年期に汗が出るのは代謝がいい証拠なんですよ

思春期から出産期、更年期と幅広い世代の患者さんと向き合っている松峯先生。どの年代の患者さんも、それぞれに体の不調や不安があるからと、一人一人の声にしっかりと耳を傾けています。

「更年期に入った患者さんが『ホットフラッシュで汗が出て心配なんです』と来たりすると、『大丈夫、汗が出ても困らないでしょ。こっそり拭けばいいのよ。汗が出るっていうのは新陳代謝している証拠だからいいことなの』と言うと、患者さんは安心した表情になります。本当は自律神経のアンバランスによるものなんですけど、メカニズムを伝えるより、まずは気持ちを落ち着かせてあげるほうが大事なんです」

患者さんの気持ちや話に耳を傾けること。治療を施す前に、心のケアをすることを松峯先生は大切にしているのです。

女同士だかこそ、ざっくばらんに話しています

患者さんが診察に入った時の雰囲気や表情から「何か話したそう」とすぐに分かるといいます。

「元気がなくて、うつむき加減の患者さんに『何か気になることがありますか? 何でも言っていいのよ』と話しかけると、せきをきったように話す方が多いんです。ある方は『夫との性行為が痛くて辛いんです。家庭内暴力ともいえるので診断書を書いてほしい』とおっしゃられました。だったら、ゼリーや膣用のホルモン剤があるので、使ってみたらと提案したんです。それから毎月取りにくるようになって、解決したんだと思いました。男性の医師には言いづらいことかもしれませんが、同性だとざっくばらんに話せる。そういう関係性が持てるのはうれしいですね」

女性だからこそわかること、女性にしか話せないことは、たくさんあります。そもそも、女性の身体の変化は、病気なのかわからないことがいろいろと起きるもの。相談していいのか迷うようなことについては、どう伝えたらいいのか難しいと感じる人も多いでしょう。しかし、異性の医師に話しにくいことも、松峯先生になら伝えられる。そういう患者さんがたくさん先生の元へ足を運んでいるのです。

次回はコロナ禍において、先生が目指す医師と患者さんの関係についてのお話です。

取材協力/大石久恵
取材・文/梅崎なつこ
写真/近藤沙菜