3.育児は上手に頼ることが幸せの近道

産後ケア

2021.10.13 更新

月経不順、生理痛、不妊、更年期、尿もれ……。女性のからだの悩みは、年齢ごとに変わっていくものです。ところが、いざ症状に直面したときにどの科で診てもらえばいいのかわからない……。そんな不安に応えようと東京の下町・木場で女性のための総合的な医院「東峯婦人クリニック」を開いたのが松峯寿美先生です。

不妊で悩んだ自身の経験をいかした不妊治療を始め、出産や産後ケアなど、女性にとって大事なライフイベントを支える、懐の深いホームドクター。トラブルがあった時には「心配しないで大丈夫!」という気風のいい言葉が、患者さんの心を落ち着かせる良薬にもなっています。キャリア50年以上のベテラン医師が見てきた出産、産後のこと、今だからこそ伝えたいことを伺いました。

前回は松峯先生が自身のクリニックを開いたお話でした。今回は、産後ケアについてより詳しいお話を聞きます。

家事の手抜きは大いにしてください

先生自身、医師として忙しく働きながら、二人の子どもを育て、家事をこなしてきました。その経験からわかったのは、掃除も洗濯も食事もすべてやろうと完璧主義になりすぎると、育児にもマイナスの影響が出てしまうということ。

「幸運なことに私の夫は無頓着というか許容範囲が広いというか(笑)。私が育児でてんやわんやで『ごはんが作れない』と言うと『じゃあ買ってくるよ』といって、鍋を持って韓国料理店へ行き、クッパを入れて帰ってきたんですよ。テイクアウトなんてない時代でしたからね。これもありなんだなと思いました。しんどい時はSOSを出していいんです。掃除をしなくても死にませんからね。『こうあるべき』と思いすぎてしまうと子育てを楽しむ余裕がなくなる。それはとてももったいないことです」

「3つ子の魂100まで」は本当です

親が子育てを楽しむことは、子どもにとってとてもいい影響があります。というのも、子どもが人を信頼し、人間関係を作るベースを作るのに必要なのが愛着形成。それを育むためには、親からのスキンシップや愛情深い眼差しが不可欠だから、と松峯先生は話します。

「3歳までに愛着形成がしっかりできれば、12、13歳の反抗期は安心して乗り越えられるし、家庭内暴力などのトラブルも少ないと感じます。とはいえ、まずは、お母さんが子どもに愛情を注げる状態であることが大事。ストレスのない生活を送って気持ちに余裕ができることで、子どもへの愛着がより濃厚になっていくものだと私は考えています」

お母さんがいかに余裕を持って子育てに取り組めるかが大切なのです。そのためには、家事を手抜きしてもいい。まわりからもどんどん協力してもらっていいのです。また、愛着形成を構築するためにも産後ケアは大切だといいます。

「産後ケアでお母さんがリラックスできる時間を持ち、育児に関する教育を受けることで、子どもとしっかりと向き合うことができます。その期間を素通りしてしまうと、産んだ子に愛着を持てなくなることもありますし、2人目や3人目となると、いっそう希薄になる場合もあります。でも、お母さんの心身が整うことで、どの子に対しても同じように愛情を注げるようになるものなんです」

お母さんひとりだけで子どもと向き合うわけではありません。ひとりですべてを背負う必要もありません。さまざまな人からのサポートや知恵を借りながら、子育てを楽しむことができれば、幸せのスパイラルはおのずと生まれていくのです。

次回は、女性特有の身体の変化についてのお話です。

取材協力/大石久恵
取材・文/梅崎なつこ
写真/近藤沙菜