2.ママが癒やされてこそ、子は元気に育つ

産後ケア

2021.09.24 更新

月経不順、生理痛、不妊、更年期、尿もれ……。女性のからだの悩みは、年齢ごとに変わっていくものです。ところが、いざ症状に直面したときにどの科で診てもらえばいいのかわからない……。そんな不安に応えようと東京の下町・木場で女性のための総合的な医院「東峯婦人クリニック」を開いたのが松峯寿美先生です。

不妊で悩んだ自身の経験をいかした不妊治療を始め、出産や産後ケアなど、女性にとって大事なライフイベントを支える、懐の深いホームドクター。トラブルがあった時には「心配しないで大丈夫!」という気風のいい言葉が、患者さんの心を落ち着かせる良薬にもなっています。キャリア50年以上のベテラン医師が見てきた出産、産後のこと、今だからこそ伝えたいことを伺いました。

前回は松峯先生が産婦人科医を目指すきっかけや経緯をお聞きしました。今回は、先生自身のクリニックを開いてからのお話です。

とくに出産前後はからだをしっかり整えましょう

松峯先生は、自分の経験をもとに東京女子医科大学病院に不妊治療外来を設立し、その後、自身の東峯婦人クリニックを開院。その際も不妊外来をメインにし、夜7時まで診察時間を延ばすなど、働く女性たちが通院しやすい環境を作っていきました。

不妊外来からスタートしましたが、「お産まで診て欲しい」という患者さんからの要望が高まり、1983年から病床を整え、出産にも対応するようになります。

「最初に苦労したのは入院中の妊婦さんの食事でしたね。妊婦さんは病人ではないので、栄養バランスを整えるだけでなく母乳がしっかり出るようにカロリーを少し多めにする必要があります。当時は母が料理を手伝ってくれていて、入院期間の3食5日分、違うメニューを考えるのに試行錯誤でした。やっぱり食事は大事ですからね」

現在は薬膳メニューを中心とした食事が好評で、妊婦さんたちに楽しんでもらっているそう。

また、産後ケアの必要性を感じていた松峯先生は、2014年に「産前産後ケアセンター 東峯サライ」を新たに立ち上げます。医療を行う診療所と細やかなサポートで妊婦さんを支える助産院を融合させた、日本では数少ない施設です。

「『サライ』という言葉には『オアシス』という意味があり、旅人が立ち寄って休息をとる場所です。妊婦さんがほっとひと息つける、レストハウスのような存在にしたいと思って作りました」

出産後、何日間か滞在してからだを整える「宿泊型産後ケア」や「乳房ケア」のほか、「離乳食教室」や、ランチをしながらざっくばらんに話ができる「食育ランチ」といったさまざまなプログラムが用意されています。

パートナーと一緒に子育てを楽しむ心がけを

松峯先生が産後ケアを大切にしているのは、パートナーとの関係性にプラスの影響をもたらすとも考えているからです。産後は、まわりの協力体制があるほど楽になり、赤ちゃんも健やかに育っていきます。とはいえ、お母さん自身に心の余裕がないと、パートナーやまわりの人たちも何をどう協力すればいいのかわからなくなってしまうこともあるもの。

「誰だって子育ては初めてで、事前にあまり知識を得ていない家族は、どうしたらいいかわからなくて当然ですよね。ときどき、パートナーが帰宅恐怖症になってしまうという話を聞くことがあります。仕事で疲れて家に帰ったら子供が大泣きしていて、矢継ぎ早に『オムツを替えて、お弁当買ってきて』などと言われると、気が滅入ってしまうこともあるでしょう。こういう時の解決方法は、お母さん自身が余裕を持つこと。産後ケアステイなどをして、いったん休む時間を持つことがとても大切なんです。そうすると心に余裕ができて、まわりとの関係もうまくいきやすいですし、協力して子育てをしやすくなります」

お母さんが産後ケアに行っている間、パートナーも教室に通って一緒に知識を学んでいけばいいということで、東峯サライでは両親学級という教室も開催しています。

出産や産後のことはお母さんだけのことではありません。パートナーやまわりが協力してこそなのです。次回は、先生の経験をもとにしたお母さんの心の持ちようについてのお話です。

取材・文/梅崎なつこ
写真/近藤沙菜