糖尿病(1型・2型)市原由美江医師糖尿病(1型・2型)市原由美江医師

1. 「1型糖尿病」の原因は、生活習慣ではない

糖尿病を知る

2020.04.06 更新

糖尿病は、よく耳にする病気の一つですが「1型」「2型」という種類があることはあまり知られていません。

小学校6年生のときに1型糖尿病を発症し、それがきっかけで医師をめざしたという市原由美江先生。現在は、糖尿病専門の医師として活躍しています。

1型糖尿病がどういう病気なのか。また、ご自身の病気がわかったきっかけやなぜ医師をめざすことになったのか。日々、どのように診察や治療に向き合っているのか、自分の病気とどう付き合っているのか、お話を聞きました。

糖尿病とは、血液中の糖分が増えてしまう病気です

糖尿病の予防や対策についてどうしたらいいかを知るためには、まずその病について理解しなければなりません。そもそも、糖尿病とは、体の中でどのようなことが起きているのでしょうか?

私たちの体は、当然ながら、活動するためのエネルギーが必要です。そのためには、食物から摂ったブドウ糖を血液中からエネルギー源として取り込んでいます。

「健康な体の場合は、血液中の糖分量が一定に保たれている状態です。一方で糖尿病は、そのバランスがうまく保てないのです。一定に保つためには、すい臓から出る『インスリン』というホルモンの働きが必要です。しかし、この『インスリン』がうまく働かず、血液中の糖分の量が増えてしまうのが、糖尿病という病気です」

その血液中の糖の量が、よく耳にする「血糖値」というもの。この値が高いと糖尿病を疑う必要があるというわけです。

「血液検査でわかるそのときの血糖値と、HbA1c(ヘモグロビンA1c)と呼ばれる、過去1,2カ月分の血糖値の平均を反映した数値から判断していきます」

糖尿病は、1型2型と種類が分かれ、それぞれ対策も症状も違います

ただ、一言で「糖尿病」といっても、「1型」「2型」と種類があります。その違いとはどのようなものでしょうか?

「まず、1型糖尿病は、自己免疫性の疾患といえます。自分のすい臓に対する自己抗体ができ、すい臓を異物だと認識して壊してしまう。そうすると、インスリンがほとんど出せなくなるんです。その状態が1型ですね。

一方、2型は、生活習慣などの『環境因子』と『遺伝子』の二つの要素が関わっています。環境因子の場合は、食べ過ぎや運動不足、不規則な生活の影響がほとんどです。ただ、遺伝要素だけの人は痩せていても罹患することがあります」

じつは、市原先生自身、11歳の時に1型糖尿病を発症しました。以来、自分の体の治療を続けながら、医師となり、患者としての視点を持ちながら診療しています。

「『糖尿病』は、どうしても食べすぎや運動不足といった生活習慣が原因というイメージが強いかと思います。でも、1型糖尿病は、そういった生活習慣が原因ではないんです

1型の場合、特定されていないものの、ウイルス感染によるものではないかと言われています。

「特定されていなくても、少なくとも1型が生活習慣病ではないということは、はっきりしています。これは2型の中での遺伝的要素の人も同じですね。特に1型は小児のケースが多いので、周りから『食べ過ぎだ』『運動しないからだ』と言われることはかわいそうなんです」

一般的な糖尿病は、肥満の人がかかりやすいというイメージを持つ人が多いのですが、必ずしもそうではありません。ましてや、1型と2型は種類が全く違う病。原因が違えば、症状も違いますし、治療法も異なってくるというわけです。

2. 子どもだからこそ感じる、 1型糖尿病の辛さへ続きます。

取材・文/長谷川華・おいしい健康編集部
写真/近藤沙菜