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2022.3.15 更新

更年期の不調は女性ホルモンの減少が原因

医療法人社団 ウィミンズ・ウェルネス  対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿 理事長

対馬ルリ子先生

女性ならば誰もが通る「更年期」。できれば、つらい思いをすることなく、心穏やかに乗りきりたいものです。更年期の不調は、女性ホルモンの減少が原因で生じます。

女性の一生とホルモンは密接に関係

女性ホルモンは、女性が妊娠・出産できるように、体づくりをするためのホルモンです。同時に、女性らしい若々しさを保ったり、病気のリスクから体を守ったりしてくれます。女性の寿命が男性より長いのは、女性ホルモンが生命を守ってくれるからです。

女性ホルモンは、一生にわたって分泌されるわけではありません。10歳ごろから分泌が始まり、妊娠・出産適齢期の20代に分泌のピークを迎えると、30代後半から右肩下がりに。そして40代から50代にかけて一気に減少し、分泌がゼロになるころ、閉経を迎えます。

平均的な閉経時期は50歳ごろで、閉経前後の5年間、トータル10年間が更年期です。更年期を迎えると、自律神経のバランスが乱れ、それまで女性ホルモンによって守られていた機能も影響を受けるため、さまざまな更年期症状が生じます。

体を守ってくれる女性ホルモン

女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンがありますが、更年期症状は、主にエストロゲンの減少によって生じます。

エストロゲンは心臓や血管、骨など、さまざまな臓器の機能を高め、病気から守る働きを担っています。そのエストロゲンが減少すると、動脈硬化や心筋梗塞、がんなどの生活習慣病になりやすくなります。また、エストロゲンは脳の機能とも関係していて、分泌が減少すると、記憶力や集中力、判断力が下がり、将来的には認知症になるリスクが上がります。

エストロゲンは別名「美容ホルモン」とも呼ばれていて、肌にハリや弾力を与え、髪に潤いを与えます。しかし分泌が減ると、シミやシワ、たるみが増え、抜け毛や白髪が目立つようになります。また、粘膜も弱くなり、目や鼻、口、膣周りが乾燥しやすくなります。

エストロゲンの材料となるのはコレステロールですが、更年期になってエストロゲンがつくられにくくなると、体内のコレステロールが余ってしまうため、コレステロール値が上昇しますし、脂肪が体に蓄積され、太りやすくなります。

女性ホルモンは、脳の視床下部の指令で卵巣から分泌されますが、エストロゲン低下の前にはプロゲステロンも減少し、そのバランスが乱れるようになると、不正出血しやすくなり、視床下部が司る自律神経のバランスも乱れます。ホットフラッシュやのぼせ、発汗、めまい、耳鳴りなどが起こるのはそのためです。また、感情・情動面も不安定になり、イライラしたり、落ち込みやすくなったりします。

更年期症状を「自分が弱いせい」「がまんが足りないせい」と捉えるのは誤りです。原因は、女性ホルモンの減少にあります。つまり、更年期を健やかに乗りきるポイントは、女性ホルモンの分泌を助け、減少を緩やかにすることにありそうです。

<参考>日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会編集「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」

<参考>​​対馬ルリ子監修「プレ更年期1年生」(つちや書店)

<参考>対馬ルリ子、南雲久美子監修「Dr.クロワッサンハンディBOOK更年期をのりきる食べ方」(マガジンハウス)

文/綾城和美

編集/おいしい健康編集部

医療法人社団 ウィミンズ・ウェルネス 
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿 理事長
対馬ルリ子先生

産婦人科医師、医学博士。1984年弘前大医学部卒。東京大学産婦人科学教室助手、都立墨東病院総合周産期センター産婦人科医長を経て、2002年ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック(現・対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座)開院。産婦人科、内科、乳腺外科、心療内科、泌尿器科等で協力し全人的女性医療に取り組む。2003年女性の心と体、社会との関わりを総合的にとらえNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立し理事長に就任。全国約600名の女性医師・女性医療者と連携して活動し、さまざまな情報提供、啓発活動や政策提言を行っている。一般財団法人日本女性財団代表理事、ウィミンズ・ヘルス・アクション実行委員会副代表、一般法人社団日本女性医療者連合副代表。 2017年日本家族計画協会「第21回松本賞」受賞。2017年デーリー東北賞受賞。2018年東京都医師会・グループ研究賞受賞。近著に『「閉経」のホントがわかる本』(集英社・2020年)などがある。

医療法人社団 ウィミンズ・ウェルネス  対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿 理事長 対馬ルリ子先生

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