5.セルフケアをもっと身近に

予防と対策

2021.09.01 更新


日々の暮らしの習慣が積み重なって起こる生活習慣病。なかでも2型糖尿病は、患者数が328万人を超え(※1)、過去最多を記録しています。さらに、糖尿病を発症する可能性を持つ予備群は1000万人(※2)いると言われ、私たちにとってとても身近な病気です。

矢作直也医師は、糖尿病専門医として日々治療と研究に向き合い、食事療法の大切さを伝え続けてきました。「おいしい健康」のサイトでも、「糖尿病(2型)の食事のきほん」の監修や「筑波大学附属病院×おいしい健康 1週間あんしん献立」の基準作成などを手がけ、正しい知識や食事の仕方について教えていただいています。

そんな矢作先生が、なぜ医師を目指し、なぜ糖尿病の専門医になったのか。経緯だけでなく、今考えていることや取り組んでいることについてのお話をお聞きしました。

※1厚生労働省「患者調査」2017年 ※2厚生労働省「国民健康・栄養調査」2016年

自覚症状がなくても、セルフケアは大切です

前回は矢作先生が監修している「筑波大学附属病院×おいしい健康 1週間あんしん献立」についてお聞きしました。このほかにも、先生が行っている取り組みのひとつに「検体測定室(ゆびさきセルフ測定室)連携協議会」というものがあります。

「検体測定室」とは、指先から採取したわずかな血液をもとに、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病にまつわる数値を測定できるスペースのこと。薬局などを中心に、私たちの身近な場所に簡単に測定できるスペースを開設することが目的です。

「まさか自分が糖尿病になるとは思っていない方が多いんです。他の生活習慣病も同じですね。自覚症状がないままに進行してしまうことは珍しくない。だからこそ、少しでも早く体のサインに気がつくことができれば、いくらでも予防できます。そのための検体測定室なんです。セルフケアの意識が高まれば、生活習慣病は予防できるものですから」

検体測定室は、臨機応変に状況に対応できる場所です

この取り組みは全国的に行われていて、現在、日本全国の薬局やドラッグストアに2,115件もの検体測定室が設置されています(2021年6月30日付)。2014年4月に34件でスタートして以来、着実に数が増えてきていることがわかります。痛みも少なく、手軽に血液測定ができることから、需要が高まっているのでしょう。自身の健康管理につながることはもちろん、病気の早期発見や重症化の予防に役立つからこそです。

「コロナ禍でお休みせざるを得なかったところも多いのですが、逆に存在意義を再確認できたとも思っています。病院へのリアルな受診回数を減らさねばならない状況下でも、ここで測定することでセルフケアに役立てることができますから」

セルフケアの方法が増えることは、私たちの健やかさにつながります。これからも、積極的にさまざまな施設を利用するように心がけ、自分の身体に目を向けるようにしてきましょう。

ゆびさきセルフ測定室  https://navi.yubisaki.org/

(新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一部の店舗で休止している場合があります。予約が必要な場合もあるので、事前に確認してください)

次回は、矢作先生がこれから大切にしていきたいことについてのお話です。

取材・文/おいしい健康編集部
写真/近藤沙菜