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2021.3.12 更新

重症になるまで病気を自覚しにくいのが腎臓病

東京医科大学病院 腎臓内科主任教授

菅野義彦先生

尿検査の結果、腎臓の機能が落ちているとわかっても、初めの頃はほとんど症状がないので、実感がもてないことが多いものです。
では腎臓が悪くなると、どうして困るのでしょうか。腎臓病の症状や治療などについてお伝えします。

腎臓病は症状が出るまでに時間がかかります

腎臓の調子が悪くなっても、最初の頃はほとんど症状がありません。病気が進むと、むくみやすい、疲れやすくなっていつもだるいといった症状が出ることがあります。
さらに腎臓の機能が落ちると、貧血、頻尿、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、不眠、かゆみなどの症状が出てきます。尿に異常が出てから腎不全(腎機能が失われた状態)までの期間には個人差があり、数年から数十年のことも。目立った症状が出てくる頃には、腎臓はとても悪くなっています。
腎臓病が怖いのは、病気がかなり進むまで、自分の体が悪くなっているという自覚を持つのが難しいところです。

腎臓の役割を機械が行うのが人工透析

腎臓病の治療である「人工透析」は、治療といっても、腎臓の機能を回復できるわけではありません。透析とは、食事などで体の中に取り入れたものの中から、血液中の老廃物や余分な水分、カリウムという成分などを人工的に取り除くこと。腎臓の機能を機械が代わりに行うわけです。
透析にも色々な種類があり、主流になっているのが「血液透析」です。血液透析では、腕の血管から血液を体外に取り出し、透析器に通して血液内の老廃物を取り除いた後、きれいになった血液を再び体の中に戻します。
血液透析は1日おきに週3回程度、毎回4〜5時間行うのが原則。現実的には今までと同じような日常生活を送ることは難しくなります。

病気の進み方を遅らせることはできます

健診で腎臓の異常が見つかっても、医療機関に行かない人、一回だけ受診したきりで通わなくなってしまう人が大勢います。ですが腎機能の低下がわかったら、重症になる前に受診して、透析にならないよう定期的に指導を受けることが大切です。
残念ながら、一度悪くなった腎臓病を完治させることはできません。しかし、生活改善に取り組むことで病気の進み方を遅らせて、透析が必要になるまでの期間を伸ばすことはできます。
次の章からは腎臓の負担を軽くする食事とはどんなものか、具体的に紹介します。

<参考> 日本腎臓病学会編集「エビデンスに基づく CKD診療ガイドライン2018」(東京医学社)

<参考> 菅野義彦ほか監修「食事療法はじめの一歩シリーズ 腎臓病の満足ごはん」(女子栄養大学出版部)

文/おいしい健康編集部

東京医科大学病院
腎臓内科主任教授
菅野義彦先生

1991年慶應義塾大学医学部卒業。同大学院医学研究科、米国留学、埼玉社会保険病院腎センター、埼玉医科大学腎臓内科、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て、2013年より現職。

東京医科大学病院 腎臓内科主任教授 菅野義彦先生

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