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2021.6.2 更新

腹痛・下痢・血便が主な症状

東京医科歯科大学消化器内科 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター センター長

長堀正和先生

炎症性腸疾患は日本では数少ない病気とされてきましたが、近年、患者が急増。クローン病にいたっては約7万人にのぼります。急増しているこの病気とは、いったいどんな症状なのでしょうか。

発症原因は不明

クローン病(Crohn’s Disease 略して「CD」)は、完治させる治療法がまだ見つかっていない病気です。同じように潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis 略して「UC」)も、治療法が見つかっていません。
ともに慢性的に腸に炎症が起こることから、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease 略して「IBD」)と呼ばれ、厚生労働省により「難病」に指定されています。

炎症性腸疾患は欧米に患者が多く、日本では数少ない病気と考えられてきました。
それが今やクローン病の患者は約7万人にのぼり、ここ40年間で急増しています。*1

発症原因は不明ですが、遺伝的な素因に、食べ物や感染などの環境因子が重なり、腸管の免疫や腸管内細菌叢が異常をきたすことで発症するのではないかと考えられています。*2

クローン病の主な症状は、腹痛、下痢、血便。腸に炎症が起こることで、これらの症状があらわれます。

寛解と再燃を繰り返すといわれています

完治しない病気・クローン病ですが、適切な治療が行われれば、「寛解(かんかい)」という、症状が抑えられた状態にまで回復します。

腹痛、下痢、血便などの症状が抑えられ、多くの患者さんが普通の生活を送ることができます。

ただし、いったん「寛解」の状態に回復しても、特に適切な維持治療が行われないと、再び「再燃」という症状が悪化した状態に戻ることが多々あります。
この「寛解」と「再燃」を繰り返し、腸の炎症が慢性的に持続するのがクローン病の特徴です。そのため、生活に不便を感じる患者さんが多く存在します。

いかに「寛解期」(寛解が続いている期間)を持続させるかが、治療のポイントといえます。

若い男性に多い病気

男女比は2対1で男性に多く、発症は20歳代で最も多いのが特徴。女性では15〜19歳が最も多くみられます。

*1『クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識』難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班)

*2 『炎症性腸疾患(IBD)』日本消化器病学会編(南江堂)

<参考>『クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識』難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班)

文/おいしい健康編集部

東京医科歯科大学消化器内科
潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター センター長
長堀正和先生

東京医科歯科大学卒業。米国マサチューセッツ総合病院などを経て、2020年4月より現職。専門は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群。炎症性腸疾患の発症に関する疫学研究がテーマ。厚生労働省科学研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班のメンバーでもある。

東京医科歯科大学消化器内科 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター センター長 長堀正和先生

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