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2021.5.19 更新

患者数は約22万人。増加傾向に

東京医科歯科大学消化器内科 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター センター長

長堀正和先生

発症原因が不明の潰瘍性大腸炎は、近年、患者が増加傾向にあります。どのような症状になるのか、詳しくみてみましょう。

発症原因は不明

1970年代は稀な疾患だった潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis 略して「UC」)。今や患者数は約22万人に達し、今後もこの増加傾向が続くと予想されています。*1
未だ発症原因は不明ですが、遺伝的な素因や腸内細菌や食べ物など、さまざまな環境因子が複雑に関与し、免疫に異常をきたすことで発症すると考えられています。*2
主な症状は腹痛、下痢、血便で、完治させる治療法はまだ見つかっていません。

クローン病(Crohn’s Disease 略して「CD」)とともに、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease 略して「IBD」)に属す慢性の炎症性疾患で、厚生労働省から「難病」に指定されています。

寛解と再燃を繰り返すといわれています

潰瘍性大腸炎は完治しない病気ですが、適切な治療が行われれば、「寛解(かんかい)」という、症状が抑えられた状態にまで回復します。

腹痛、下痢、血便などの症状が抑えられ、多くの患者さんが普通の生活を送ることができます。

ただし、いったん「寛解」の状態に回復しても、とくに適切な維持治療が行われないと、再び「再燃」という症状が悪化した状態に戻ることが多々あります。
この「寛解」と「再燃」を繰り返し、腸の炎症が、慢性的に持続するのが潰瘍性大腸炎の特徴です。そのため、生活に不便を感じる患者さんが多く存在します。

いかに「寛解期」(寛解が続いている期間)を持続させるかが、治療のポイントといえます。

30歳代が発症のピーク

潰瘍性大腸炎の患者の男女比はほぼ同じ。発症は30歳代がピークです。

*1『潰瘍性大腸炎の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識』難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班)

*2『炎症性腸疾患(IBD)』日本消化器病学会編(南江堂)

<参考> 糖尿病ガイドライン2018『潰瘍性大腸炎の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識』難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班)

文/おいしい健康編集部

東京医科歯科大学消化器内科
潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター センター長
長堀正和先生

東京医科歯科大学卒業。米国マサチューセッツ総合病院などを経て、2020年4月より現職。専門は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群。炎症性腸疾患の発症に関する疫学研究がテーマ。厚生労働省科学研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班のメンバーでもある。

東京医科歯科大学消化器内科 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター センター長 長堀正和先生

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