04

2021.6.2 更新

寛解を維持するための食事

東京医科歯科大学消化器内科 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター センター長

長堀正和先生

前回説明した「栄養療法」と「薬物療法」で症状が寛解すると、食事療法も平行して行われるようになります。食事で気をつけるべき注意点を解説していきます。

症状が軽くなったら少しずつ食事を

活動期に1日の必要カロリーのすべてを栄養剤から摂取し、症状が改善したあとは徐々に栄養剤の量を減らし、その分を食事(低脂肪・低残渣食)で補っていきます。
寛解を維持させるために、必要カロリーの半分程度を栄養剤で摂取することを「ハーフED(Elemental Diet:成分栄養療法)」といいます。

「低脂肪・低残渣食」とは?

少しずつ栄養剤を減らしていく寛解導入後の食事として、一般的に「低脂肪・低残渣食」が推奨されていますが、その科学的な根拠は必ずしも十分ではありません。*1

「低脂肪」とは、脂肪分が低い状態のこと。脂肪は脂質とも呼ばれ、炭水化物、たんぱく質と並ぶ、人間が活動する際のエネルギーになる栄養素。主に油・肉・魚・乳製品などに多く含まれています。

「低残渣」とは、食べたものがからだに吸収されず、残ったかすが少ない状態のこと。食物繊維が多い食べ物は、残渣が起こりやすいといえます。残渣が起こりやすい代表的な食品として、根菜類の生野菜、きのこ類、海藻、こんにゃくなどがあげられます。

脂質が低く、食物繊維も少なめの消化にいい食事が「低脂肪・低残渣食」。料理ならばおかゆ、スープ、うどんなどが該当します。

自分の体質に合う・合わない食事を見極める

消化器官に炎症が起こっている場合は、食事内容によって症状が強くなることがあります。
食事によって症状を上手にコントロールできる場合もありますが、病気の進行を抑えるというエビデンス(科学的根拠)が確立している食事法は残念ながらありません。何をどのくらい食べても平気かは、個人差が大きいといえます。

食事内容によっては腹痛や下痢などの症状を引き起こすことがありますので、自分の体質に合う・合わない食品を早めに見つけることが、重要なポイントになります。

自分の体質に合う食品を見つけるには、食事記録をつけたり、食事を写真に撮っておいたりするといいでしょう。食品の種類だけではなく、食べる量によっても体調が変わることがあります。食べた量も記録しておきましょう。

下痢や腹痛などの症状が出る食品は、なるべく避けたり、食事量を調整したりしましょう。
体質に合わない食品が多い場合は、食事バランスに偏りが出やすくなります。管理栄養士に相談しながらバランスを整えていきましょう。

*1 『クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識』難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班)

<参考> 『クローン病・潰瘍性大腸炎の安心ごはん』女子栄養大学出版部

文/おいしい健康編集部

東京医科歯科大学消化器内科
潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター センター長
長堀正和先生

東京医科歯科大学卒業。米国マサチューセッツ総合病院などを経て、2020年4月より現職。専門は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群。炎症性腸疾患の発症に関する疫学研究がテーマ。厚生労働省科学研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班のメンバーでもある。

東京医科歯科大学消化器内科 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター センター長 長堀正和先生

医師の指導のもと栄養指導を受けている方は、必ずその指示・指導に従ってください。