鉄欠乏性貧血治療の基本は鉄剤の服用になります。
食事では1日10 mgほどしか鉄分がとれませんが、鉄剤では1日100 mg以上(※)もとれるので、食事だけで鉄分を補うよりも早く症状を改善することができます。
※:15歳以下の患者さん用の鉄剤を除く
なかには「鉄剤を飲むと胃がムカムカする」など不快感を訴える人もいますが、薬を変更するなどして完全に治癒するまで飲み続けることが重要です。
ここでは、鉄剤の飲み方について解説します。
鉄剤は医師の指示どおりに飲むことが大切
鉄剤を服用すると1~2週間で効果が出て、「こんなに早く元気になれるなんて思ってもいませんでした」と驚く患者さんがおられます。
鉄剤による治療で肝心なことは、症状がよくなったからといって勝手に薬をやめないことです。
鉄欠乏性貧血を完治するためには、まずヘモグロビンを正常値にする必要があり、それには約3ヵ月かかります。
この時点で、貧血はほとんど改善しますが、完治のためには貯蔵鉄(肝臓などにストックされている鉄)を増やす必要があります。
貯蔵鉄を増やすためには、さらに約3ヵ月かかるため、合計約6ヵ月かけて服用し続けることになります。
副作用がつらいときは、薬を変更できるか医師に相談を
鉄剤を飲むと便が黒くなりますが、これは吸収されなかった鉄が消化管で酸化され、黒色となって便中に排泄されるためです。
また、鉄剤の服用を始めた人で1〜2割の人に、副作用として腹痛、食欲不振、胃がムカムカする、吐くなどの消化器症状がみられます。
消化器症状は、鉄剤の鉄分の量が多いほど強く出る傾向にあります。
鉄剤にはさまざま種類があります。使っている薬の副作用がつらいときは、ほかの薬に変更することも検討できます。
飲み薬は、どれも鉄を補充する点では同じですが、有効性や安全性に違いがあり、剤形も錠剤、カプセル剤、粉薬、シロップ薬の4種類があります。
シロップ薬は本来小児用ですが、飲みやすく大人にもすすめられます。
飲み薬の服用が困難な場合や、飲み薬の副作用によって医師が使用しないほうがいいと判断した場合は、注射剤を使用することもできます。
注射剤は、飲み薬と比べて多量の鉄を血液に直接補充することになります。
そのため、注射してすぐに元気になる方がいらっしゃいます。
薬を変更したい場合は、担当の医師に相談しましょう。
水で飲みにくい場合は、鉄剤をお茶で飲んでもかまいません
昔は、鉄剤をお茶と一緒に飲んだり、鉄剤服用前後1時間はお茶を飲んではいけないなどといわれていました。
これは、お茶に含まれるタンニン酸が鉄と結合して沈殿し、鉄の吸収を抑制してしまうからです。
現在では、多少吸収が抑制されるとしても、鉄剤に含まれる鉄の量は多いので、効果に問題はないとされています。
わざわざお茶で飲む必要はありませんが、水よりもお茶のほうが飲みやすいという人は、お茶で飲んでも問題ありません。
文/高橋裕子
編集/おいしい健康編集部