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2022.7.26 更新

「貧血」とは、どういう病気ですか?

現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長

岡田定先生

健康診断で貧血を指摘されたのに放置していたり、不調が続いているのに「歳だから」「ちょっと疲れているだけ」と貧血に気づかないまま生活したりしていませんか?

貧血になると、疲れやすいなどの身体的な症状だけでなく、やる気が出ないなどの精神的な症状も現れるため、生活の質が低下してしまいます。
貧血は、鉄剤による治療を行うことができます。貧血と診断されたら、医師の指示にしたがってきちんと治療しましょう。

とはいえ、そもそも貧血にならない体にすることが大切ですし、治療後は再発しないようにすることも重要です。まずは貧血のことをきちんと知り、しっかりと対策をとりましょう。

ここでは、貧血とはどのような病気なのかを説明します。

貧血とは、ヘモグロビン値が基準値より少ない状態です

手元に健康診断の結果表がある人は、ぜひ確認してみてください。あなたは貧血ではありませんか?

貧血とは、ヘモグロビン値が成人男性では13 g/dL未満、成人女性では12 g/dL未満となっている状態です
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、ヘモグロビン値が基準値を下回っている日本人男性は10.7%、女性は13.5%。10人に1人は貧血ということになります。
※ヘモグロビン値は、「Hb」または「HGB」と表記されることもあります。

ヘモグロビンは、赤血球に含まれる赤い色素で、酸素を肺から全身に運び、二酸化炭素を全身から肺に運ぶという重要な役割を担っています。

このヘモグロビンを作るために不可欠なのが鉄です。何らかの理由で鉄が不足すると、ヘモグロビンが作られなくなり、全身に十分な酸素を送り届けることができなくなります。
その結果、全身が酸欠状態になって、さまざまな症状が出ます。これが貧血です。

最も多いのが鉄欠乏貧血です

貧血にはさまざまなタイプがありますが、貧血の原因の3分の2は鉄不足による「鉄欠乏性貧血」です。

鉄が不足する主な原因は、慢性出血による「鉄喪失の増大」、食事で鉄の摂取量が低下している「鉄摂取の低下」、成長期や妊娠期など通常より鉄が必要なときに十分に摂取できていない「鉄需要の増大」の3つです。
具体的には下記のような病気や、体の状態が考えられます。

【鉄喪失の増大】

◎性器出血:
過多月経、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内ポリープ、子宮がん

◎消化管出血:
痔、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、大腸がん、大腸憩室、潰瘍性大腸炎、抗凝固薬・抗血小板薬使用

◎その他:
鼻出血、献血、血尿・ヘモグロビン尿、スポーツ貧血

【鉄摂取の低下】

◎摂食障害:
偏食、過度なダイエット

◎吸収障害:
胃切除後、慢性萎縮性胃炎

【鉄需要の増大】

◎小児・思春期の成長

◎妊娠、授乳

鉄不足以外の原因で貧血になることもあります

貧血の原因で多いのは鉄不足ですが、鉄不足以外が原因の貧血もあります。いくつか例をあげましょう。

【二次性貧血(他の病気が原因で起こる貧血)】

体内に十分な鉄があるにもかかわらず、体内の鉄をうまく利用できないことで起こる貧血です。
悪性腫瘍や膠原病、感染症、肝疾患、腎疾患などが原因となります。

【再生不良性貧血】

骨髄中の造血幹細胞に障害が起こり、赤血球・白血球・血小板のすべての血球が減少する疾患です。

【溶血性貧血】

「溶血」とは、赤血球が破壊されることを指します。
溶血性貧血は、赤血球が通常よりも早く壊されて赤血球の寿命が短くなることで起こります。
鉄欠乏性貧血は基本的にゆっくりと進行しますが、溶血性貧血は、数日単位で一気に貧血が進行することがあります。

【自己免疫性溶血性貧血】

溶血性貧血の代表的な病気です。
自分の赤血球にもかかわらず、自分の体の中でそれを壊すように働く抗体ができて溶血が起こる病気です。

文/高橋裕子

編集/おいしい健康編集部









現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長
前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田定先生

1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020 年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長 岡田定先生

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