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2022.7.26 更新

貧血対策のための食事のポイント

現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長

岡田定先生

鉄欠乏性貧血を予防・改善するためには、食事で鉄を積極的にとることが重要です。ただ、鉄ばかりとっても貧血対策にはなりません。健康な体づくりの基本は、1日3回、栄養バランスのとれた食事をとることです。

最近、欠食や偏食、過度なダイエットなどで食生活が乱れている人が少なくないようです。まずは食生活全般を見直し、そのうえで鉄を意識してとることを心がけましょう。

ここでは、貧血対策のための食事のポイントについて説明します。

1日3食、栄養バランスのよい食事を

朝は忙しいからとコーヒーだけですませたり、ダイエットのために極端に減食したりしていませんか?
偏食やインスタント食品ばかり食べる習慣も栄養不足を招き、貧血の原因になっています。食事は1日3食きちんととることが基本です。
大切なのは、食事の量よりもバランスと覚えておきましょう。

栄養バランスがとれた献立とは、炭水化物を多く含む食品(ご飯・パン・めん類など)+主菜(魚介類、肉類、卵、大豆製品など良質なたんぱく質を含む食品)+副菜(野菜類、海藻類などビタミン・ミネラルを含む食品)です。
これに食後のデザートやおやつなどに果物や乳製品を加えるといいでしょう。

鉄分を意識した食生活を

鉄は食事から摂取するのが基本です。いったいどのくらいとればよいのでしょうか?
成人男性では1日約 1mg、女性では約0.8 mg、鉄を損失しています(※1)。
また女性は月経により、1日あたりに換算してさらに約0.5 mgの鉄を損失しています(※1)。この損失する鉄を食事から補う必要があります。
※1:e-ヘルスネット, 「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」(厚生労働省)

しかし、「令和元年 国民健康・栄養調査報告」では、日本人の成人における鉄の摂取量は、若くなるほど推奨量よりも少なくなることがわかっています。
【男性】鉄の1日当たりの摂取量(平均値)と推奨量

【女性】鉄の1日当たりの摂取量(平均値)と推奨量

※2:「令和元年 国民健康・栄養調査報告, 第1表の2,第1表の3 」(厚生労働省)
※3:「日本人の食事摂取基準(2020年版), P366」(厚生労働省)

鉄は、体内にも蓄えられているため摂取不足になったとしても、影響はすぐには現れません。
しかし、一度体内の鉄分が不足してしまうと、簡単に補充することができません。また、鉄は食材に含まれる量の10分の1程度しか体内に吸収されません。
そのため、日頃から鉄分摂取に対する意識を持つことが必要になります。

サプリメントを使うなら補助的に

食事で十分に鉄がとれない人は、サプリメントを使うのも貧血対策のひとつです。ただし、サプリメントの鉄含有量は、鉄剤に比べて少ないのが一般的です[サプリメント:約10mg、鉄剤:100mg以上(※4)]。
したがって、貧血の人がサプリメントだけで鉄不足を解消しようとしても難しいのが現実です。
鉄剤の治療を受けながら食事で鉄をとることを基本とし、サプリメントは補助的に使うのがいいでしょう。
※4:15歳以下の患者さん用の鉄剤を除く


文/高橋裕子

編集/おいしい健康編集部

現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長
前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田定先生

1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020 年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長 岡田定先生

医師の指導のもと栄養指導を受けている方は、必ずその指示・指導に従ってください。