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2021.6.10 更新

生活習慣の見直しは今からでも間に合います

現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長

岡田定先生

「08 生活習慣は薬に匹敵する影響」で、生活習慣の改善が高血圧や糖尿病など、様々な病気に大きな効果があることを説明しました。
中高年の方であっても、日常生活を改めるのに遅すぎるということはありません。生活習慣の見直しは今からでも間に合います。
食事以外に大切になる「運動」「お酒」「睡眠」「タバコ」「ストレス」の5つについて解説します。

運動は特別なスポーツでなくて構いません

食事の次に大事なのが運動です。運動はウォーキングに代表される有酸素運動と、ストレッチ体操などの無酸素運動に分かれます。
運動といっても、特別なスポーツをしなくても大丈夫。働き盛りの方なら、可能な距離であれば最寄駅の一駅前で降りて職場や自宅まで一駅ぶん歩く。駅や職場ではエスカレーターやエレベーターではなく、階段を使う。こうしたこまめに体を動かす習慣が効果的です。体操はラジオ体操(テレビ体操)などを1回10分程度、週に3回ほど行うのがおすすめです。
体を動かす習慣を身につけると、リフレッシュになって、仕事のパフォーマンスが高まります。

お酒は適量なら大丈夫

お酒は適量をたしなむ程度なら大丈夫です。1日の適量とは、ビールなら中ビン1本、日本酒なら1合、焼酎なら0.6合(100ml)、ワインなら4分の1本(180ml)、ウイスキーならダブル1杯。もちろん飲み過ぎはアルコール性肝障害や脂肪肝の原因になります。
「休肝日を設けましょう」と言われることがありますが、これは肝臓を休ませる日を作れば大丈夫というより、1、2日でも飲酒をしないことで、トータルの飲む量を減らしましょうという意味があります。
「お酒を飲むとよく眠れる」と考えて、睡眠薬代わりにお酒を飲むのは誤りです。適量以上のお酒は睡眠の質を下げて、深い睡眠が得られなくなります。

7時間睡眠が最も長生き

実は日本は世界で一番睡眠時間が短い国。睡眠時間を削ることが美徳であるという価値観が浸透しています。
しかし、睡眠時間を減らして仕事をしていると、体を壊し、病気にかかりやすくなってしまいます。十分な睡眠をとって仕事を頑張るほうが、長い目で見れば効率的です。睡眠時間と寿命の関係を調べた研究によると、7時間の睡眠をとった人々が最も死亡率が低く、長生きだったという結果がわかっています。※1
睡眠が足りないとかかりやすくなるのが、肥満、糖尿病、高血圧、がんなどの病気です。7〜9時間睡眠と比べると、6時間睡眠では23%、5時間では50%、2〜4時間で73%も、肥満になりやすくなります。※2 忙しい毎日の中ではなかなか難しいことですが、まずは睡眠時間を確保して、それ以外の時間を仕事やプライベートに振り分けるようにしましょう。

タバコを止めると食べ物をおいしく感じられます

5つの習慣の中で、特に効果が大きいのがタバコを止めることです。
タバコを止めると、3つのリスクが減ります。タバコのリスクとは、①がんになりやすい、②動脈硬化を進める、③慢性閉塞性肺疾患(痰を伴う咳や息切れが何年も続き、息を吐く時間が延びてぜいぜいする病気。COPDと略す)にかかりやすいの3つです。禁煙すれば、これらの重大な病気の危険が減るだけでなく、味覚が改善して食べ物をよりおいしく感じられるようになります。
ただし普通のタバコを電子タバコに替えても、煙が出ないぶん周囲の人への害は減りますが、本人にとっては従来のタバコと同様の害は避けられません。「禁煙したいけどタバコをやめられる自信がない」という方は、禁煙外来を受診してみてください。

ストレスで高血圧に

ストレスは血圧を上げてしまいます。
血圧は自律神経がコントロールしていて、自律神経は交感神経と、副交感神経に分けられます。人間はストレスにさらされると脳がキャッチし、抵抗するために、心身を興奮状態にさせる「交感神経」が強く働きます。交感神経の働きが活発になると、心拍数が増加したり、心臓の収縮力が増したりして、心臓から送り出される血液量が増えます。一方で末梢血管は収縮します。このように、血液によって血管を内側から押す力が高まり、血圧が上昇するのです。
血圧を上げないためには、ストレスの原因を取り除くことが必要です。十分に睡眠をとって生活リズムを整え、交感神経を休めましょう。

※1 Daniel F Kripke, et al:Mortality associated with sleep duration and insomnia.Arch Gen Psychiatry.2002;59(2):131-6.

※2 James E Gangwisch, et al:Inadequate sleep as a risk factor for obesity: analyses of the NHANES I.Sleep.2005;28(10):1289-96.

<参考>岡田定 著「リモート診療 病院に行きたくない時の名医との33のQ&A」(主婦の友社)

<参考>佐藤直樹 監修「高血圧の毎日ごはん」(女子栄養大学出版部)

文/おいしい健康編集部









現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長
前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田定先生

1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020 年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長 岡田定先生

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