健康診断の結果が思わしくなかったら、生活を見直すより薬を飲むほうが効果的なのでは?と思うかもしれません。
実は生活習慣を見直すだけで血圧や血糖値は大きく下がります。さらに、いわゆる「生活習慣病」だけでなく、がんの予防にもなります。
生活習慣の見直しが検査値や病気の予防に与える効果について、説明します。
食事や運動で血圧は10〜20mmHg低下
生活習慣の改善と薬では、どちらの効果が大きいのでしょうか。
薬を使った場合と、生活習慣を改善した場合を比べると、生活習慣の改善で薬に匹敵するくらい心筋梗塞などの病気を減らせたという研究結果があります。※1
【薬の場合】
◎スタチン(悪玉コレステロールを下げる薬)で47%減少
◎降圧剤で26%減少
◎アスピリンで12%減少
【生活習慣の場合】
◎禁煙で44%減少
◎体重の減量で34%減少
◎定期的な運動で12%減少
◎健康的な食生活で9%減少
食生活の見直しや減量、運動で血圧が10〜20mmHg下がったという研究結果もあります。※2
◎果物や野菜の摂取を増やし、脂飽和脂肪酸を減らすと血圧は8〜14mmHg低下
◎減塩で3mmHg低下
◎体重を4〜8%減らすと3mmHg低下
◎1日30分以上の有酸素運動(ウォーキングなど)で4〜9mmHg低下
生活習慣の見直しなら薬代がかからず、副作用がないのもメリットといえます。(なお、医師から薬を飲むよう指導されている場合は、その指示に従ってください。)
がんも生活習慣病
生活習慣が影響するのは、いわゆる「生活習慣病」と呼ばれている糖尿病や高血圧、脂質異常症などの病気にとどまりません。一見、生活習慣と関係ないように思えるがんにも大きく影響しています。
がんの主な原因は生活習慣と感染です。喫煙や、塩分が多く野菜・果物の不足した食生活、お酒の飲み過ぎ、運動不足、肥満などががんの原因になります。
感染によるがんとしては、ヘリコバクター・ピロリの感染による胃がんなどがあります。
「うちはがん家系だから」と、がんの遺伝が気になる方がいるかもしれません。しかし、親から子どもに遺伝するがんは、がん全体の5%にすぎないことがわかっています。がんの遺伝を極端に心配する必要はありません。それよりも親と同じような問題のある生活習慣を受け継ぐことで、がんになりやすくなる可能性があります。
例えば肥満は遺伝しませんが、身近な人に「感染する」傾向があります。もちろん、ウイルスのようにうつるわけではありません。肥満の家族の食生活に影響されて、一緒に暮らす人も体重が増えやすくなるからです。ご飯を食べすぎても家族の中で注意する人がいなかったり、誰かがお菓子を我慢しようとしても、家族がお菓子を買ってきてつい食べてしまったりするためです。身近に肥満な人がいると肥満になりやすいことは、研究でも明らかになっています。※3
※1 Antithrombotic Trialists’ (ATT) Collaboration: Aspirin in the primary and secondary prevention of vascular disease: collaborative meta-analysis of individual participant data from randomised trials.Lancet.2009;373(9678):1849-60.
※2 Viera AJ, et al: Management of mild hypertension in adults.BMJ.2016;355:f i5719.
※3 Nicholas A Christakis, et al:The spread of obesity in a large social network over 32 years.N Engl J Med.2007;357(4):370-9.
<参考>岡田定 著「リモート診療 病院に行きたくない時の名医との33のQ&A」(主婦の友社)
文/おいしい編集部