1. 肺の生活習慣病といわれるCOPDとは?

慢性閉塞症肺疾患

2022.08.24 更新

咳が長く続き、呼吸が息苦しいことがよくある。タバコが原因かもしれないと思いつつも、なかなかやめられない。まわりから「やせたね」といわれることが増えた……。
「自分に当てはまっている……」と感じた人は、COPDという慢性閉塞症肺疾患の可能性があるかもしれません。

COPDとは、肺に慢性的な炎症が起こり、構造が壊れてしまう疾患。その原因のほとんどが喫煙といわれています。数多くのCOPDの患者さんを診てきた呼吸器内科医の福永興壱先生は、「この病の大変さは、咳や息苦しさに加えて、食欲が落ち痩せてしまうことです。十分な栄養が摂れず、体力が低下して動かなくなると筋肉が落ちてしまう。こういった悪循環がCOPDを悪化させる要因です」と言います。

肺の生活習慣病と言われるCOPDを治療するうえで不可欠なのは「患者さんとの会話」だと話します。話のなかで得た情報をもとに、生活スタイルに合わせた治療法や生活習慣の改善を指導している福永先生。患者さんとの向き合い方や治療において大切にしていることを伺いました。

第1回目は、COPDとはどんな病気なのかを解説していただきます。

咳や痰が出る、という風邪に似た症状なので気付きにくいんです

COPDの患者さんの9割以上が喫煙者で、症状が顕著に表れるのが60代〜70代が中心です。

「初期症状としては、咳が続き痰が出る、といったごくありふれたものです。風邪が長引いて治っていないだけだとやり過ごしたり、坂道を登る際に息切れをしてしんどく感じるのは年のせいだと気に留めないなど、気づきにくい病気なんです」

一般の健康診断で行われるレントゲン検査においても、初期段階ではほとんど発見できず、CTスキャンをしてようやく分かるというほど。病気が進行し、平坦な道を歩いていても息切れしてしまうといった症状が出てきた時には、肺機能がかなり落ちていると考えられています。

タバコの煙は肺の先端までダメージを与えてしまいます

COPDを発症する主な原因は喫煙です。肺は鼻や口から取り込まれた酸素を血中に取り込み、二酸化炭素を排出する臓器。その重要な呼吸システムがタバコの煙によって、崩されてしまうのです。

左右の肺に分かれている気管支は、20回以上の分岐を繰り返し、先にいくにつれて細くなっていきます。直径2cmある気管は、末端のいちばん細い部分では0.1mmほど。先端には「肺胞」という空気が入った細胞が平均4億8000万個あり、肺全体の容積の9割を占めています。

「タバコの煙は直径が0.4〜1μmほどの小さな粒子なので、喫煙すると簡単に肺胞まで到達します。煙によって慢性的に炎症が起きて細胞が壊れると、酸素を血中に送り、二酸化炭素を外に出す“ガス交換“がうまくいかず息苦しくなるんです」

そもそも、タバコの煙の粒子には、カドミウムなどの重金属やダイオキシン類など約70種類の発がん性物質をはじめ、数千種類の有害物質が含まれています。これらの有害物質が肺や気管支の細胞を傷つけ、慢性的に炎症を起こしてしまうというわけです。

「炎症が広がると気管支とその周囲の組織が壊れ、気管支の壁は弾力を失ってしまいます。気管支が押しつぶされて空気が通れなくなり、さらには肺胞が壊れてかたくなって“ガス交換“ができなくなるんです。CT写真で確認すると、健康な肺は肺胞のつぶつぶがクリアに見えますが、炎症を起こしていると肺胞の膜がほとんど見えず壊れた壁のように映し出され、明らかに損傷した状態が見てとれます」

これらの変化は、急に起こるものではなく、徐々に進行していきます。だからこそ、症状が出ても風邪だと勘違いしてしまいがち。そのうち、酸素を取り入れる機能だけでなく、二酸化炭素を吐き出す機能も低下してしまい「呼吸不全」の状態になってしまいます。喫煙者は、自身の体調の変化を軽視してはいけません。健康診断では年齢によって「付加健診」として肺機能検査を受けられるので、定期的に肺の機能をチェックするように心がけましょう。

次回は、実際にCOPDと診断された場合の治療についてのお話です。

取材・文/梅崎なつこ
編集/おいしい健康編集部

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