4.気をつけたい合併症のこと

慢性閉塞症肺疾患の合併症

2022.09.15 更新

咳が長く続き、呼吸が息苦しいことがよくある。タバコが原因かもしれないと思いつつも、なかなかやめられない。まわりから「やせたね」といわれることが増えた……。
「自分に当てはまっている……」と感じた人は、COPDという慢性閉塞症肺疾患の可能性があるかもしれません。

COPDとは、肺に慢性的な炎症が起こり、構造が壊れてしまう疾患。その原因のほとんどが喫煙といわれています。数多くのCOPDの患者さんを診てきた呼吸器内科医の福永興壱先生は、「この病の大変さは、咳や息苦しさに加えて、食欲が落ち痩せてしまうことです。十分な栄養が摂れず、体力が低下して動かなくなると筋肉が落ちてしまう。こういった悪循環がCOPDを悪化させる要因です」と言います。

肺の生活習慣病と言われるCOPDを治療するうえで不可欠なのは「患者さんとの会話」だと話します。話のなかで得た情報をもとに、生活スタイルに合わせた治療法や生活習慣の改善を指導している福永先生。患者さんとの向き合い方や治療において大切にしていることを伺いました。

4回目COPDの患者さんに気をつけてほしい合併症についてのお話です。

COPDの方はウィルスに感染しやすくなっています

COPDの患者さんは、病気の進行によって免疫力が落ち、風邪やインフルエンザ、肺炎などをおこしやすくなっています。気をつけてほしい合併症や依存症がいくつかあると福永先生は話します。

「コロナウィルスにも感染しやすいので注意が必要です。COPDの方の肺は、慢性炎症をおこしているため、ウィルスに感染すると、さらに酸素交換ができなくなり重症化しやすくなります。

治療として、重症患者さんには人工肺を用いたエクモが使われますが、エクモで酸素交換ができたとしても一時的なものに過ぎないんです。例えていうなら、家が火事で一時的に外へ避難しても、家が焼け焦げてしまったら、帰るに帰れない……。あくまでも一時的な処置に過ぎません。COPDのような呼吸器疾患をある方にとってコロナウィルスはとくに怖い感染症です」

他にも、心筋梗塞、骨粗鬆症、胃潰瘍といった病気に繋がるので、早期に発見し治療をスタートさせることが大切です。

うつ病など精神的な併存症にも注意してください

COPDは身体面だけでなく精神的な面でもダメージがあると福永先生は言います。

「息苦しくて動くのが億劫になると、家に引きこもりがちになり、精神的な疎外感や孤独感からうつ病を発症する患者さんもいらっしゃいます。COPDでは高齢者の方が多く、年齢と共に動くのが億劫になりがちです。そこへ体調が悪くなって活動制限がおきると、もっと孤独感を覚えやすくなってしまう。できるだけご家族や友人の見守りが必要になります」

うつに近い症状が出た場合は、呼吸に影響を与えない投薬を行いながら、うつ病や不安症状を緩和させる治療を平行していくそう。また、家族だけで支えるのが難しい場合や、患者さんがひとり暮らしの場合などは、地域のサポートサーピスと連携し、周囲の協力を得ながら治療を進めていきます。

それぞれの環境によって、合併症や依存症の可能性は変わるもの。自身はもちろん、周りの家族も気をつけて見守るようにしていきましょう。

次回は、福永先生が患者さんと接するうえで大切にしていることについてお聞きします。

取材・文/梅崎なつこ
編集/おいしい健康編集部
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