3. がんを予防する食事のポイントとは?

食習慣と病気

2022.08.02 更新

大学の医学部を卒業してから現在に至るまで、研究医の道を走り続けてきた津金先生。大学医学部の助手を経て、国立がんセンター(現・国立がんセンター)、そして同センターがん予防・検診研究センター(現・社会と健康研究センター)と活動の場を得て、疫学・予防研究の第一人者として生活習慣とがんなどの関係について研究してきました。

今は、日本人の2人に1人以上がかかるというがん。予防や対策についての情報が数多くあり、何をどう取り入れたらいいのか、どんなことに気をつけて日々を過ごせばいいのか、悩むこともあるかもしれません。なるべくがんにならないために、私たちがすべきことは何でしょうか? 津金先生に、長年の疫学研究で得た科学的根拠に基づくがんの予防法について伺いました。

前回は日本人のがん因子である喫煙、飲酒、食事、身体活動、体形、感染の6つのうち、喫煙、飲酒、身体活動、体形の生活習慣について教えていただきました。今回は、特に誰にとっても身近な要因である「食事」についてのお話です。

1日3食、バランスのいい食事が基本です

がん予防に効果があるとされる食品ばかりを摂り続ける人がいますが、津金先生は「かえって危険」と言います。

「現段階では、“これだけ食べていればがんにならない”という食品はありません。特定の食品ばかり摂って栄養が偏ると、かえって健康を害することになります。がん予防に限らず、健康であるためには、食事は1日3食、なるべく規則正しく、栄養バランスよく摂ることが基本です」

塩分の多い食品をひとつ控えることから、始めてください

食事の基本を守ったうえで、さらにがんのリスクを低くするためには、どのような点に気をつけたらいいのでしょうか? 津金先生は、特に塩分について気を配ることをすすめています。

「日本人は胃がんが多いのですが、その一因とされているのが塩蔵食品の摂りすぎです。原因は、塩蔵魚介類や干物、漬物など、塩分濃度の高い食品を多く摂る日本の食文化。一方、高血圧に対しては、食塩の総摂取量が関係しています。食塩摂取の1日あたりの目標値は、男性は7.5g未満、女性は6.5gです。ひとまず、1日2gを目標に減塩してみてください。食塩2gとは、みそ汁1杯、大きめの梅干し1個分です。胃がん予防のためには、特に、塩分濃度が高い食品を週に1回程度にすることから始めてみてはどうでしょうか?」

確かに、従来の和食では塩分が多くなりがちです。とはいえ、いきなり大幅な減塩の食事となるとそっけなく感じてしまうかもしれません。「塩分の多い食品をひとつ控える」ことなら、すぐに取り組めるもの。みそ汁のある献立の際は、漬物を食べないなど1食当たりのバランスを考えてみましょう。

野菜は1日350g以上、摂りましょう

野菜や果物を多く摂ることもがん予防には有効だと言われています。逆に不足すると、胃や食道、肺がんなどの発がんリスクが高まることがわかっています。なぜ野菜や果物を摂るとよいのでしょうか?

「詳しいメカニズムはまだわかっていませんが、おそらく野菜や果物に含まれるβカロテン、ビタミンC、葉酸、フラボノイド、フィトエストロゲン、食物繊維などの成分が関係していると思われます。野菜は1日あたり350g以上摂るよう推奨されています。果物には果糖が多く含まれるので、摂りすぎるのはよくありませんが、カリウム、ポリフェノール、食物繊維などが多く含まれいます。日本人は果物の摂取量が少ないので、1日に1品、100g程度は摂ることをおすすめします」

野菜350gと言われても、パッと料理を思い浮かべるのは難しいかもしれません。例えば、小松菜やほうれん草の1束が300〜400g、にんじんは1本200〜300g、トマトは1個150〜200gになります。生野菜で摂ろうとするとかなりの量を口にしなければなりません。茹でて和え物にしたり、肉や魚と一緒に蒸したりして量を減らすなど工夫してみましょう。

また、がん予防には、食べたり飲んだりするものの温度も大切な要素だと津金先生は教えてくれます。熱いものは、発がんリスクを高めることがわかっているからです。

「熱によって食道の粘膜細胞が傷つき、炎症を起こすなどにより、食道がんの発生リスクを高めます。熱い食べ物や飲み物が好きな人もいるでしょうが、そこは我慢して、なるべく冷ましてから食べたり飲んだりするようにしてください」

赤肉や食肉加工品の摂りすぎに注意を

欧米型の肉中心の食生活は、大腸や乳がんのリスクを高めるといわれます。この場合の「肉」とは、鶏肉と魚肉を含まない「赤肉」のことで、牛肉や豚肉、羊肉を指します。海外の疫学研究でも肉類の過剰摂取で、結腸がんのリスクが上がることがわかっています。

「日本人の場合は、赤肉を過剰に食べている人はそれほど多くありません。むしろ人によっては不足していて、病気リスクが上がっている可能性もあります。たんぱく質やビタミン類などの必要な栄養素も多く含まれているので、肉ばかり食べている食生活でなければ、さほど心配はいりません。また、肉や乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸も取り過ぎると動脈硬化を引き起こしますが、少ないと血管壁が弱くなり脳卒中を起こしやすくすることが分かっています。また、ハムやベーコンなどの加工肉は、国際的には大腸がんのリスクを確実に高めるとされているので、食べ過ぎには注意しましょう」

食事を我慢する必要はなく、食材の選び方や調理法を工夫すればいいというわけです。日々の暮らしのなかでスーパーやコンビニに行った際には、津金先生の言葉を思い出して、食べるものを選ぶようにしてみましょう。

次回はがん予防について正確な情報を得るために大切なことを教えていていただきます。

小学館の運営するサライ.jp内に、おいしい健康との特集ページ『いのちを守る食と暮らし』があります。コロナ禍を経験した私たちが、人生100年時代をどう健康に楽しく生きていくのかを考えていきます。
こちらにも、津金先生をはじめとする医師のインタビュー記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。

https://serai.jp/save-life

撮影/フカヤマノリユキ
取材・文/高橋裕子
編集・文/おいしい健康編集部