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2021.6.16 更新

毎日の食生活を見直しましょう

京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長

内藤裕二先生

「04  特効薬はないため、生活習慣の改善が鍵に」で、逆流性食道炎の治療では生活習慣の改善が鍵になることをお伝えしました。ここでは具体的に食生活のどんなところを見直せばいいか、みていきます。

肥満を解消する食生活を心がけましょう

肥満になっておなかに脂肪がたまると、腹圧が高くなって胃を圧迫するため、胃酸の逆流が起こりやすくなります。肥満体形の人は、食事をした後に食道と胃の境目が緩みやすくなるともいわれます。
肥満の改善は、逆流性食道炎の症状の改善に非常に効果的です。肥満を解消する生活習慣は次の通りです。

◎偏った食べ方をやめる
油物が多い、野菜が少ないなど、脂肪分の多い食事は太りやすくなります。揚げ物など油脂の多い料理を減らし、野菜を使った料理を増やしましょう。

◎食べ過ぎを控える
食べ過ぎると余ったエネルギーが脂肪となって蓄積していきます。食事の量を見直す上で大切になるのが、自分に合った食事を摂っているかどうかです。
自分に合った食事の量(適正エネルギー)は、人によって違います。自分の標準体重と身体活動量から適正エネルギーを計算してみましょう。

■標準体重の計算方法
標準体重(目標体重)
=身長(m)×身長(m)×22
■適正エネルギーの計算方法
適正エネルギー量(kcal/日)
=標準体重(kg)×身体活動量(kcal/kg)
■身体活動量の目安
あなたはどれにあてはまりますか?
ーーーーーーーー
・低い
1日の半分以上は座っていて、
ほとんどからだを
動かさない
・・・・・・・・
・ふつう
1日に合計2時間程度、
仕事や家事などで
継続的にからだを動かしている
・・・・・・・・
・高い
仕事や家事などで
頻繁にからだを動かしている。
またはスポーツの習慣がある
ーーーーーーーー
【成人男性はこちら】
・低い……33〜36kcal/kg
・ふつう……38〜42kcal/kg
・高い……44〜47kcal/kg
・・・・・・・・
【成人女性はこちら】
・低い……31〜33kcal/kg
・ふつう……36〜39kcal/kg
・高い……41〜44kcal/kg
ーーーーーーーー

※身体活動量の目安は、「日本人の食事摂取基準」2020年版(厚生労働省)02_各論_1-1エネルギーP79「年齢階級別に見た身体活動レベルの群分け」を参考に、18〜64歳の値を、小数点第一を四捨五入して算出しました。

◎食事リズムを整える
朝食を抜く、夜遅くにたくさん食べるなど、不規則な食事を続けると、体脂肪がたまりやすくなります。朝ごはんをとり、夜遅くならないうちに晩ご飯を食べるなど、食事のリズムを整えましょう。

◎運動する
体を動かさないとエネルギー消費が少なくなり、余ったエネルギーが体脂肪としてたまっていきます。忙しくて運動する時間がとれない場合は、バスを使わずに歩く、家事をするなど、日常生活の中で積極的に体を動かすことでエネルギーを消費できます。

胸やけを起こしにくい食べ方を心がけましょう

食後しばらくは、食べたものを消化するために胃酸が盛んに分泌されます。そのため、食べた直後に横になると胃酸が逆流しやすくなりがちに。その上、胃酸が食道にとどまる時間が長くなるので、食道粘膜の炎症が起こりやすくなります。「夕食の時間が遅く、食後すぐに寝る」という生活サイクルはぜひ改めましょう。
特に夜間に胸やけなどの症状が現れやすい人は、就寝の3時間前までに夕食を終わらせることを意識してください。
なお、上半身をやや高くして寝ると、胃酸の逆流を予防するのに効果的です。平らな状態でないと熟睡できない場合は、左側を下にした横向きの姿勢で眠りましょう。左下の姿勢のほうが右下の姿勢より逆流が少ないことが確認されています。
胃酸の逆流を起こしにくくする食べ方のポイントは次の3つです。

①よく噛んでゆっくり食べる
早食いは胃酸過多の原因になり、食べ過ぎにもつながります。ゆっくり食べると唾液の分泌が盛んになり、逆流した胃酸を洗い流すのに効果的です。

②腹八分目を心がける
食べ過ぎると、胃と食道の間にある下部食道括約筋が緩み、胃の中のものが逆流しやすくなります。食べ過ぎていた人は、1回の食事の量を減らすだけで、逆流する胃酸の量を減らすことが可能です。

③食後すぐは横にならない
食べたものを消化している間は胃酸が盛んに分泌されるため、横になると胃酸が逆流しやすくなってしまいます。食後少なくとも30分間は体を起こしておきます。

脂肪分の多い食事は胸やけを起こしやすくなります

胸やけを防ぐためには、食べる物を上手に選びましょう。揚げ物など脂肪分の多い料理は消化に時間がかかり、胃の中に長くとどまるため、食道と胃の境目を緩める原因になります。また、脂肪分は食道を胃酸に対して敏感にするともいわれており、少しの逆流でも胸やけを感じやすくなります。
揚げ物など油を使った料理を多く食べている人は、油物を控えるだけで胃酸の逆流が改善することがあります。

特定の食べ物が胸やけの原因になっていることがあります

チョコレートや柑橘類を食べると、胃酸の逆流が起こりやすくなる場合があります。思い当たる人は一度にたくさん食べるのはやめましょう。また、これらの食品に限らず、「〇〇を食べると胸やけを起こすことが多い」と感じる食品がある場合は、一度に食べる量を少なめにすることが大切です。

<参考> 日本消化器病学会編集「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2015」(南江堂)

<参考> 三輪洋人監修「シニアの逆流性食道炎:こみ上げる胃酸にもう悩まない! (別冊NHKきょうの健康)」(NHK出版)

文/東 裕美

京都府立医科大学附属病院
内視鏡・超音波診療部 部長
内藤裕二先生

京都府立医科大学 消化器内科学教室 准教授。京都府立医科大学卒業。2015年より現職。専門は、消化器病学、消化器内視鏡学、消化管学、酸化ストレスと消化管炎症、生活習慣病、腸内微生物叢。国際フリーラジカル学会(SFRR)アジア President、米国消化器病学会(AGA)会員。主な著書に『便秘薬との向き合い方』(金芳堂)、『消化管(おなか)は泣いています』『人生を変える賢い腸のつくり方』(ともにダイヤモンド社)がある。

京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長 内藤裕二先生

医師の指導のもと栄養指導を受けている方は、必ずその指示・指導に従ってください。