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2021.4.9 更新

特効薬はないため、生活習慣の改善が鍵に

京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長

内藤裕二先生

もし逆流性食道炎とわかったら、どうすれば症状を改善できるのでしょうか。治療は食生活を中心とする生活習慣の見直しと、薬による治療が中心になります。逆流性食道炎の治療について、解説します。

生活指導と薬物療法により治療が行われます

逆流性食道炎と診断されたら、薬による治療と生活の改善を行います。
投薬治療で胃酸の分泌を抑えることはできるのですが、胃酸が逆流するのを防ぐ薬は今のところありません。そのため、治療効果を高めるには、投薬に加えて、逆流を招きやすい生活習慣を改めることが欠かせません。
食生活では、胃酸の逆流を起こしやすい食べものを避け、食事の仕方を改めます。日常生活では、逆流の原因となる肥満、運動不足、喫煙、不規則な生活、姿勢や動作、ストレスなどを改善するようにします。詳しくは「05  毎日の食生活を見直しましょう」(近日掲載予定)以降をご覧ください。

主に胃酸の分泌を抑える薬が用いられます

薬物療法では主に、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬を服用します。この薬によって、食道粘膜が炎症を起こすことでできた傷は治ることが多いのですが、服用をやめると再発することが少なくないため、再発予防として長期間薬を服用することも多いです。また、逆流そのものを治すことはできません。
補助的に、消化管運動機能改善薬や、ストレスを減らす抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬などを使うこともあります。

手術が検討される場合もあります

生活改善と投薬治療では思うような効果が現れない、大きな食道裂孔ヘルニアがある、非常に強い逆流があるなどのケースでは、逆流を防ぐための手術を行うことがあります。
最近はお腹を切らない腹腔鏡手術が増えており、手術の安全性が高くなっていますが、それでも手術にはリスクが伴います。手術がベストな選択方法なのかは、内科担当医、手術を行う外科医とよく相談して決めることが大切です。

手術が検討されることがあるケース

・薬の効果が得られない

・大きな食道裂孔ヘルニアがある

・とても強い逆流がある

・食道狭窄などの合併症が起きている

・逆流が原因で肺炎が起きたり咳が続いたりする

・若い人で、薬をやめると再発する

・胃酸以外の原因で症状が現れている

・バレット食道になっている

<参考> 日本消化器病学会編集「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2015」(南江堂)

<参考> 三輪洋人監修「シニアの逆流性食道炎:こみ上げる胃酸にもう悩まない! (別冊NHKきょうの健康)」(NHK出版)

文/東 裕美

京都府立医科大学附属病院
内視鏡・超音波診療部 部長
内藤裕二先生

京都府立医科大学 消化器内科学教室 准教授。京都府立医科大学卒業。2015年より現職。専門は、消化器病学、消化器内視鏡学、消化管学、酸化ストレスと消化管炎症、生活習慣病、腸内微生物叢。国際フリーラジカル学会(SFRR)アジア President、米国消化器病学会(AGA)会員。主な著書に『便秘薬との向き合い方』(金芳堂)、『消化管(おなか)は泣いています』『人生を変える賢い腸のつくり方』(ともにダイヤモンド社)がある。

京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長 内藤裕二先生

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