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2021.4.9 更新

食道に炎症があるのが逆流性食道炎

京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長

内藤裕二先生

胃食道逆流症にはいくつかタイプがあり、その中の一部が逆流性食道炎と呼ばれます。自分がどのタイプに当てはまるのか、病院に行ったらどんな検査を受けることになるのか、気になりますね。逆流性食道炎の基本的な診断や検査について説明します。

検査でびらん性と非びらん性に分けられます

胃酸が食道に逆流する病気は、3つのタイプに分けられます。
① 食道に炎症(食道粘膜のただれ)が起きていないけれど、自覚症状がある
② 食道に炎症が起きていて、自覚症状もある
③食道に炎症が起きているけれど、自覚症状はない

①~③をまとめて「胃食道逆流症」と呼び、さらに①は「非びらん性胃食道逆流症」、②③は「びらん性胃食道逆流症」(=逆流性食道炎)に分類されます。
「非びらん性胃食道逆流症」か「びらん性胃食道逆流症(逆流性食道炎)」かは、内視鏡検査で食道の炎症の有無を確認して診断します。

炎症の有無は胃カメラで確認

胸やけや呑酸(どんさん)などがあって病院を受診すると、まず症状について問診されます。他の病気が疑われる症状がない場合は、内視鏡などの検査は行わずに、逆流性食道炎の治療を始めることがあります。
なお、非びらん性胃食道逆流症も、症状改善のための治療や対策の多くは、逆流性食道炎と共通しています。

食道以外の症状(胸痛や咳など)がある場合は、症状だけで病気を診断するのは難しいため、まず胃酸の分泌を抑える「プロトンポンプ阻害薬」という種類の薬を服用してみて、症状が改善されるか確認することがあります。
症状が消えたら胃酸の逆流が起きている(胃食道逆流症を発症している)と判断できます。症状が消えない場合は、他の病気の可能性も考えられるため、内視鏡検査など必要な検査を行い、病気を確定してから、適切な治療を始めます。

食道や胃を調べる内視鏡検査は「上部消化管内視鏡検査」(胃カメラと呼ばれるもの)で、口か鼻から入れた内視鏡によって食道と胃の状態を診ます。
逆流性食道炎の治療を行うには、内視鏡検査が必須というわけではありません。しかし、逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)か非びらん性胃食道逆流症かを確定診断するには、内視鏡検査が必要です。内視鏡検査を行うと、逆流性食道炎の重症度や、食道裂孔ヘルニアなども確認することができます。
また、食道がんや胃がんなど他の病気でないことを確認するためにも、内視鏡検査は受けたほうがいいでしょう。

治療しないと食道がんにつながる恐れも

逆流性食道炎は命にかかわる病気ではなく、軽症であれば自然治癒する場合もあります。しかし、「胸やけが続く」「酸っぱいものがこみ上げてくる」などの不快症状が長引けば、日常生活に支障が出ることがあります。
また、重症化して炎症による傷が深くなると、食道潰瘍になることがあり、大量出血や穿孔(せんこう、食道壁に孔が開くこと)を起こすと、緊急処置が必要になることがあります。
さらに、潰瘍を繰り返すと、傷痕がひきつれて食道狭窄(しょくどうきょうさく、食道の中が狭くなること)になり、食べものが飲み込みにくい「嚥下困難(えんげこんなん)」が起こることがあります。
最も怖いのは、日本人では可能性は低いものの、食道がんにつながる恐れがあることです。
逆流性食道炎が長引くと、食道の粘膜が胃の粘膜のような組織に変化する「バレット食道」になることがあります。バレット食道は食道がんが発生しやすい状態として、欧米では警戒されています。日本では、バレット食道から食道がんに発展した報告例は多くありませんが、注意はすべきです。

<参考> 日本消化器病学会編集「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2015」(南江堂)

<参考> 三輪洋人監修「シニアの逆流性食道炎:こみ上げる胃酸にもう悩まない! (別冊NHKきょうの健康)」(NHK出版)

文/東 裕美

京都府立医科大学附属病院
内視鏡・超音波診療部 部長
内藤裕二先生

京都府立医科大学 消化器内科学教室 准教授。京都府立医科大学卒業。2015年より現職。専門は、消化器病学、消化器内視鏡学、消化管学、酸化ストレスと消化管炎症、生活習慣病、腸内微生物叢。国際フリーラジカル学会(SFRR)アジア President、米国消化器病学会(AGA)会員。主な著書に『便秘薬との向き合い方』(金芳堂)、『消化管(おなか)は泣いています』『人生を変える賢い腸のつくり方』(ともにダイヤモンド社)がある。

京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長 内藤裕二先生

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