07

2021.6.16 更新

お酒やたばこを控えると改善することがあります

京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長

内藤裕二先生

お酒やたばこをたしなんでいるという方は多いことでしょう。これらは残念ながら、逆流性食道炎の症状を悪化させてしまいます。お酒などの飲み物やたばことの上手な付き合い方について、説明します。

アルコールは胃酸の分泌を増やします

アルコールは胃酸の分泌を促すため、大量に摂取すると食道と胃の境目が緩み、逆流が起こりやすくなります。特に空腹時に飲むと、胃の粘膜を刺激しやすい傾向があります。枝豆、豆腐、白身魚など脂質が少なく、食道・胃への負担が少ないものを食べながら飲みましょう。
ビールなどに含まれる炭酸ガスは、胃の内圧を高めて逆流を起こしやすいといわれています。また、強いお酒は胃の粘膜を荒らす心配があります。お酒は種類を問わず、たしなむ程度にとどめてください。

炭酸飲料も逆流しやすくなります

アルコールが入っていなくても、炭酸飲料の飲みすぎには注意を。炭酸ガスが胃の内圧を高め、胃酸が逆流しやすくなります。「ビールを飲むのを我慢して炭酸飲料にしよう」というのは、逆流性食道炎の予防・改善という意味では効果がありません。

コーヒーや緑茶は2杯までなら大丈夫

1日に3杯以上コーヒーや紅茶を飲むと、逆流性食道炎のリスクが高くなります。特に胸やけなどの不快感があるときは、コーヒーや紅茶は控えめにしたほうがいいでしょう。

たばこは胃酸の逆流をおこしやすくします

たばこは胃酸の分泌量を増やし、食道と胃の境目の締まりを緩める作用があると考えられています。さらに、たばこを吸う人は唾液の分泌量が少なくなりがちです。禁煙治療を受けた人を1年後に調査したところ、禁煙に成功した人の4割は逆流症状が改善したという報告もあります。
喫煙は逆流性食道炎だけでなく、食道がん、肺がんなど多くの病気のリスクを高めます。全身の健康のために、この機会に禁煙を実行してください。自分の意志だけで禁煙するのが難しい場合は、禁煙外来などの医療機関で禁煙治療を受けることも検討しましょう。
なお、禁煙に成功すると食欲が増すことがありますが、食べ過ぎて胸やけを起こさないよう、自分にあったエネルギー摂取量の維持が大切です(「05  毎日の食生活を見直しましょう」を参照してください)。

<参考> 日本消化器病学会編集「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2015」(南江堂)

<参考> 三輪洋人監修「シニアの逆流性食道炎:こみ上げる胃酸にもう悩まない! (別冊NHKきょうの健康)」(NHK出版)

文/東 裕美

京都府立医科大学附属病院
内視鏡・超音波診療部 部長
内藤裕二先生

京都府立医科大学 消化器内科学教室 准教授。京都府立医科大学卒業。2015年より現職。専門は、消化器病学、消化器内視鏡学、消化管学、酸化ストレスと消化管炎症、生活習慣病、腸内微生物叢。国際フリーラジカル学会(SFRR)アジア President、米国消化器病学会(AGA)会員。主な著書に『便秘薬との向き合い方』(金芳堂)、『消化管(おなか)は泣いています』『人生を変える賢い腸のつくり方』(ともにダイヤモンド社)がある。

京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長 内藤裕二先生

医師の指導のもと栄養指導を受けている方は、必ずその指示・指導に従ってください。