日本人女性の1割以上は貧血といわれており(※1)、貧血を引き起こす要因として過多月経や過度なダイエット、妊娠などが挙げられます。
また、過度なダイエットは、本人だけでなく、将来、妊娠した場合におなかの赤ちゃんにも悪影響を与えることがわかっています。
※1:「令和元年 国民健康・栄養調査報告, 第24表の1,3」(厚生労働省)
ここでは、貧血を引き起こす要因と、過度なダイエットがもたらす貧血以外の悪影響について説明します。
月経のある日本人女性の約5人に1人が貧血
月経がある女性は、毎月数日間にわたって血液が失われるため、貧血になりやすくなります。
とくに過多月経の人は、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内ポリープ、子宮がんなどの病気が原因のこともあるので、ためらわずに婦人科を受診して調べてもらいましょう。
多くは、これらの病気を治療することで貧血が改善されます。
過度なダイエットの影響も
ダイエットによる食事制限や、偏食によって栄養バランスが乱れた結果、鉄不足や鉄分の吸収悪化を引き起こして貧血になる人が多くみられます。
そもそも鉄は、体内へ吸収されにくいという特徴があり、食材に含まれる量の10分の1程度しか体内に吸収されません。通常の食事でも鉄不足になりやすいのです。
それなのに、食事量を減らしたり偏食したりしてしまうと、たちまち鉄不足に陥ります。
「シンデレラ体重」を目指すと健康を損なうことも
若い女性の中には、身長160 ㎝で体重46 ㎏を目安とするシンデレラ体重に憧れている人が少なくないようです。
シンデレラ体重は完全にやせ過ぎであり、この体重をキープしようと食事制限をすることで栄養不足の状態が続くと、悪影響がでてきます。
貧血だけではありません。ほかにも肌や髪のトラブル、将来には糖尿病、骨粗しょう症、骨折などを起こしやすくなり、健康を損なう心配があります。
また、シンデレラ体重を目指すなどして過度なダイエットをすると、本人だけでなく将来生まれてくる赤ちゃんにも悪影響が出るといわれています。
過度なダイエットをした女性の赤ちゃんは低体重で生まれる可能性が高く、その赤ちゃんが成人すると糖尿病や高血圧を発症しやすいということもわかっています(※2,3)。
※2:Knop MR et al:J Am Heart Assoc. 2018;7(23):e008870.
※3:DOHaD学説(ドーハッド/生活習慣病胎児期発症起源説)
妊娠・授乳期間は貧血のリスクが上がります
女性の体は、月経や妊娠で多くの鉄分を必要とします。
18〜64歳(月経なし)の鉄分摂取の推奨量は6.5 mgですが、妊娠初期では9.0 mg、中期後期では16.0 mgの摂取が推奨されています(※4)。
※4:「日本人の食事摂取基準(2020年版), P366」(厚生労働省)
妊娠初期から中期に貧血だった妊婦の赤ちゃんは低出生体重児のリスクが1.29倍、早産のリスクは1.21倍になるといわれています(※5)。
※5:Haider BA et al:BMJ. 2013;346:f3443.
妊娠6~10週は胎児の発達に重要な時期で、妊娠3~8週には胎児の循環器系や呼吸器系など重要な臓器が形成されます。
妊娠が判明する6週ごろに鉄剤を飲み始めても妊娠10週くらいまで貧血は改善しません。
妊娠を考えている人は妊娠前に貧血対策または治療をすませておきましょう。
また授乳期間中も貧血になりやすくなります。母乳は、お母さんの血液から作られています。授乳婦における鉄分摂取の推奨量は、年齢や月経の有無に応じた推奨量に2.5 mgを足した数値になります。
授乳しているということはお母さんの血液が失われているということです。
そのため母乳育児をしているお母さんは、ミルクで赤ちゃんを育てているお母さんと比べて貧血になりやすくなります。
文/高橋裕子
編集/おいしい健康編集部