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2021.9.14 更新

減塩で心臓や血管への負担を軽減できます

東京医科大学病院 腎臓内科主任教授

菅野義彦先生

血液透析中の食事は、まず減塩から始めましょう。食塩の摂取量を減らすことで、腎臓への負担を減らすことができます。食塩を減らしてもおいしく食べられるコツを知れば、食事の満足度を下げずに減塩できます。

なぜ透析中は減塩が必要?

透析治療を受ける人は、なぜ食塩を制限しなければいけないのでしょうか。
食塩は体の中で水分と結びつくので、食塩が体内にたまると、水も必ずたまります。食塩1gに対して、約100gの水分が体の中にたまるのです。
腎臓の機能が低下すると、食塩を体の中から出すことができなくなるので、食塩と結びついている水分を動かすために血圧が上昇します。また、むくみ、心不全、肺水腫などの原因になります。
体内にたまった水分と食塩は透析で除去しますが、1回の透析で除去する量が多くなるほど、心臓や血管への負担は大きくなります。
以上のような理由から、腎臓の負担を減らすためには食塩の摂取量を減らすことが欠かせないのです。

調理や食べ方で無理なく減塩できます

透析治療を行っている人は、原則として食塩の摂取を1日6gにするのを目標とします。「1食2g未満」を目安にすると調理しやすいでしょう。
最初は味気なく感じるかもしれませんが、続けるうちに薄味に慣れるものです。塩味以外のうま味、香り、酸味を活用すると、減塩してもおいしく食べられます。こんぶやかつお節などでしっかりとっただしを使う、香辛料、香味野菜の香り、酢・レモンなどの酸味を上手に使い、味にアクセントをつけるといいでしょう。
また、とろみも減塩料理の強い味方。具材に味がからむので、薄味でも塩味を感じやすくなります。
塩分の多い食品の食べ方に気をつけることも重要です。ウインナーやさつま揚げなどの加工品は塩分表示を確認して食べ過ぎないようにする、干物ではなく生魚を使う、つくだ煮や漬物は低塩で手作りするなどの工夫をすることで、献立の幅を広げつつ減塩が可能になります。

●減塩調味料でおいしく減塩しよう
減塩調味料を使うと、減塩しているとは思えない味付けに仕上がり、食事の満足度が高まります。調味料として欠かせない塩、しょうゆ、みそはいろいろな減塩商品が市販されているので、好みに合うものを使うといいでしょう。

●加工食品は必ず食塩量をチェック
栄養成分にナトリウム量が表記されていることがありますが、「ナトリウム量=食塩量」ではないので注意が必要です。食塩相当量の表記がない場合は、以下の計算式で求めます。
ナトリウム量(㎎)×2.54÷1000
=食塩相当量(g)

●減塩のコツ
・使用する調味料の量を確認する
・ゆで野菜や焼き魚などは味付けをせずに作り、決められた分量の調味料を食べるときにかける
・しょうゆやソースなどは小皿にとってつけて食べる
・食塩量の多い漬物、練り物などの加工品、インスタント食品、煮物などを減らす
・汁物は1日1回1/2杯までにする
・めん類はつゆを残す
・食塩が多くなりやすい外食は減らす

いろいろ工夫しても「薄味だとどうしても食欲が出ない」という場合などは、主治医に相談しましょう。体の状態を見ながら、食塩摂取量を調整することが可能です(自己判断で食塩摂取量を増やすのは控えましょう)。
なお、アプリ「おいしい健康」では体の状態を把握するのが難しいことから、透析患者さんの食塩摂取量は1日6gとしています。食事基準については、かかりつけ医の指示に合わせてプロフィール画面から変更することが可能です。詳しくはこちらをご覧ください。

<参考>菅野義彦 病態監修『透析・腎移植の安心ごはん』(女子栄養大学出版部)

<参考>宮本佳代子 監修『腎臓病 透析患者さんのための献立集 改訂版』(女子栄養大学出版部)

文/東 裕美

東京医科大学病院
腎臓内科主任教授
菅野義彦先生

1991年慶應義塾大学医学部卒業。同大学院医学研究科、米国留学、埼玉社会保険病院腎センター、埼玉医科大学腎臓内科、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て、2013年より現職。

東京医科大学病院 腎臓内科主任教授 菅野義彦先生

医師の指導のもと栄養指導を受けている方は、必ずその指示・指導に従ってください。