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2021.9.14 更新

食品は何をどのくらいとったらいい?

東京医科大学病院 腎臓内科主任教授

菅野義彦先生

透析治療を行っている人はたんぱく質を適量とりつつ、カリウム、リンはとりすぎないように気をつけなければいけません。何をどれくらいとればいいのかを理解し、毎日の食事を充実させましょう。

たんぱく質を含む食品のとり方

●主食(ごはん、パン、めん類など)
穀類は主要なエネルギー源。エネルギー不足を防ぐために毎食、主食をとります。パンは食塩が多く含まれ、めんはつゆを使うので、食塩量が増えてしまいます。パンは1日1回程度にし、めん料理は減塩調味料を活用するのも一つの手です。

●果物・いも類
生の果物はカリウムを多く含むため、食べる量と回数に注意してください。特にバナナ、メロン、スイカは含有量が多いので気をつけましょう。缶詰は生よりカリウムが少なめですが、シロップにはカリウムが多いので、シロップは捨てましょう。
いも類もカリウムを多く含むので、下ゆでしてから使いましょう。

●野菜
たんぱく質が多めの野菜(ブロッコリーやほうれん草など)と、少なめの野菜を組みあわせて1日200g程度にします(野菜の摂取量は野菜の組み合わせや、水分制限の有無により異なります)。カリウムを減らすためにゆでられるものはゆで、ゆで汁は捨てて調理します。
海藻・きのこはカリウムが多く含まれるので、とりすぎに注意しましょう。

●魚介、肉、卵、豆・大豆製品、乳・乳製品
たんぱく質は魚介、肉、卵などからバランス良くとりましょう。
・魚介
魚の脂質にはDHA、EPAが多く含まれており、これらは動脈硬化を防ぐ働きが期待できます。特に青魚に豊富です。
練り製品や干物などには食塩が多く、小魚や魚卵にはリンが多いので気をつけましょう。
・肉
肉の脂質は、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患の危険因子である飽和脂肪酸が多いので、脂身の少ない部位を選びます。
ハム、ソーセージなどの加工品は塩分、リンを多く含むので頻繁には食べないようにします。
・卵
リンが多く含まれているので、1日1個までとして、リンの豊富な他の食品と重ならないようにしましょう。
・豆・大豆製品
豆の中でも大豆や大豆製品は良質のたんぱく質を含んでいます。
・乳・乳製品
たんぱく質、カルシウム、リンが多く、牛乳やヨーグルトは水分も多いので、1日100gまでにとどめます(摂取量はたんぱく質摂取量や水分制限の有無により異なります)。チーズは、スライスチーズ1枚に約0.5gの食塩を含むことも考慮しましょう。

たんぱく質を含まない食品のとり方

◎砂糖・甘味料・でんぷん
エネルギー補給のために使いますが、砂糖類はとりすぎると中性脂肪値に影響します。甘さが砂糖の1/7~1/3の低甘味ブドウ糖重合体製品(粉飴)は、砂糖と同じ甘さにしようとすると3~7倍使えるので、エネルギーを3~7倍とることができます。粉飴はでんぷんから作られた甘味料。砂糖と比べて甘さがかなり控えめなので、一度にたくさん摂取でき、エネルギーアップに活用できます。飲み物や寒天ゼリー、シャーベットなどに使うといいでしょう。
春雨は炒め物やサラダに使うのがお勧めです。

◎油脂
エネルギー補給のために使用します。1日にとるエネルギー量のうち脂質の占める割合を20~25%にするために、揚げ物を食べるなら1日1回程度にする、マヨネーズやオイル入りのドレッシングを使いすぎないなどの工夫が必要です。

1日にとりたい食品構成例

「1日のエネルギー量1800kcal、たんぱく質60g、カリウム1900mg、リン900mg」と指示された場合、1日に何をどれくらい食べればいいかの目安量を見てみましょう。

●1日にとりたい食品構成例

<たんぱく質を含む食品>

・主食(たんぱく質約18g)

ごはん200g×2回

そば180g×1回

・野菜200〜300g(たんぱく質約4.5g)

たんぱく質が少なめの野菜(キャベツ、玉ねぎ、にんじんなど)と多めの野菜(ブロッコリー、アスパラガスなど)を組み合わせます

・いも類・果物(たんぱく質約1.5g)

じゃがいも70g

果物の缶詰50g

・魚介、肉、卵、豆・大豆製品、乳・乳製品(たんぱく質約36g)

鮭60g

豚肉ロース(脂身なし)50g

卵50g

木綿豆腐50g

牛乳100g

<たんぱく質を含まない食品>

・砂糖・甘味料、でんぷん

砂糖12g

片栗粉15g

・油脂

植物油15g

マヨネーズ10g

※参考文献1を基に作成
※野菜はたんぱく質が多い野菜・少ない野菜があります。組み合わせにより、たんぱく質をとりすぎてしまう場合がありますので、医師や管理栄養士に相談しましょう
※上記はあくまで一例です。記載のない食品、醤油や味噌などたんぱく質や塩分を含む調味料については、医師や管理栄養士に相談しながら上手に取り入れましょう

献立のポイント

透析中の食事のポイントは①減塩、②必要なエネルギーをきちんととる、です。
食塩の量が多いと体内に水分をため込んでしまい、体への負担が大きくなります。血液透析をしているからと油断せず、薄味を心がけてください。
また、栄養不足の状態が続くと体力が落ちたり、ほかの病気にかかりやすくなったりすることもあるため、食が細くて十分な量が食べられない場合は、エネルギー補給食品なども活用しましょう。
反対に、食べ過ぎてしまう人は食べたものをメモして、食事を見直してみる必要があります。

<参考>菅野義彦 病態監修『透析・腎移植の安心ごはん』(女子栄養大学出版部)

<参考>宮本佳代子 監修『腎臓病 透析患者さんのための献立集 改訂版』(女子栄養大学出版部)

※1 黒川清 監修『腎臓病食品交換表』(医歯薬出版)

文/東 裕美

東京医科大学病院
腎臓内科主任教授
菅野義彦先生

1991年慶應義塾大学医学部卒業。同大学院医学研究科、米国留学、埼玉社会保険病院腎センター、埼玉医科大学腎臓内科、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て、2013年より現職。

東京医科大学病院 腎臓内科主任教授 菅野義彦先生

医師の指導のもと栄養指導を受けている方は、必ずその指示・指導に従ってください。