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2021.9.14 更新

血液透析の生活で気をつけること

東京医科大学病院 腎臓内科主任教授

菅野義彦先生

透析治療を行っている人は、自分の体重を把握することと、透析用の血管を守ることに気をつければ、日常生活を普通に送ることができます。量を管理すればお酒を楽しむことも可能です。

血液透析時の基準になる「ドライウェイト」

「ドライウェイト」とは「元の体重」のこと。腎機能が低下して尿が作れなくなると、水分を摂取した分だけ体重が増えて戻らなくなります。例えば、体重60㎏の人が1リットルの水(1㎏)を飲んだら、体重が61㎏に増えるのです。
血液透析では水分の除去量によって体重をある程度調整できるため、基準となる体重(元の体重)を把握しておく必要があります。
本当に太ったときはドライウェイトを増やし、やせたときは減らしますが、体重だけでは判断しづらいため、腹囲や手足の周囲径を定期的に測定する施設もあります。
なお、食事以外でとっていい1日の水分の適量はドライウェイト1㎏につき15ml以下ですが、「できるだけ少なく」とされています。水分による体重増加は透析に負担となるため、水分のとりすぎに注意してください。

お酒を楽しむならおつまみは塩分控えめに

飲酒について主治医から許可が出ている人は、お酒を飲んでもかまいません。ただし、水分管理の1つとしてアルコール量を考えることが重要です。
アルコールには醸造酒類(日本酒、ビール、ワインなど)と蒸留酒類(焼酎、ウイスキーなど)があります。醸造酒はわずかながらたんぱく質が含まれ、カリウムは赤ワイン100mlに110㎎、ビール100mlに34㎎含まれ、リンも若干含まれます。蒸留酒にはたんぱく質およびリンは含まれません。
また、アルコール摂取に合わせてつまみをたくさん食べると塩分過剰になりがちです。食塩量の多いつまみはできるだけ避けましょう。
以上のようなことを考慮し、各栄養素、水分ともに1日の制限量に収まるようにすれば、お酒を楽しむことができます。

血液透析ではシャントを守りましょう

シャントは血液透析中に血液の出入り口となる太い血管で、手術をして作ります。針を刺すことで少しずつ痛むため、ほかの採血や注射のときはこの血管を使わないようにします。さらに日常生活でも、シャントのある側の腕で血圧を測らない、袋やバックなどで圧迫しないなどに気をつけます。
聴診器を使って1日何度かシャントの音を聞くのを習慣にし、いつもと違う音がしたらすぐ主治医に知らせます。
このようにしてきちんと管理すれば、シャントを数年間はもたせることができます。

運動はしても大丈夫?

基本的にはどのような運動をしても問題ありません。体重のコントロールのためにも、定期的に運動をすることは大切です。
しかし、筋肉が弱った状態で急に運動をすると、関節を痛めたり、肉離れを起こしたりすることがあるので、運動前に準備運動をしっかり行い、少しずつ運動量を増やしていくようにしましょう。

<参考>菅野義彦 病態監修『透析・腎移植の安心ごはん』(女子栄養大学出版部)

<参考>宮本佳代子 監修『腎臓病 透析患者さんのための献立集 改訂版』(女子栄養大学出版部)

文/東 裕美

東京医科大学病院
腎臓内科主任教授
菅野義彦先生

1991年慶應義塾大学医学部卒業。同大学院医学研究科、米国留学、埼玉社会保険病院腎センター、埼玉医科大学腎臓内科、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て、2013年より現職。

東京医科大学病院 腎臓内科主任教授 菅野義彦先生

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