余分なカリウムがたまると不整脈の原因になることもあるため、透析を始めたらカリウムの摂取量は1日2000㎎が目標になります。カリウムの摂取量を減らせる調理法を活用し、食事を楽しめるようにしましょう。
血液透析なら1日2000mg以下を目指しましょう
透析治療が必要なほど腎不全が進んだ人は、余分なミネラルを体から出すことができません。中でも特に問題になるのがカリウムです。カリウムは筋肉の収縮に関与し、体内にたまりすぎると筋肉にまひが起こります。大量にたまると「高カリウム血症」となり、心臓の筋肉がまひして不整脈を起こすことがあります。
透析を始めたら、カリウムの摂取は1日2000㎎を目指しましょう。
生野菜よりゆで野菜がおすすめです
生野菜やくだもの、いも類、肉・魚などにカリウムは多く含まれますが、カリウムは水に溶けやすい性質があるので、野菜やいも類は下ゆですることでカリウムの量を減らすことが可能です。
野菜をゆでるとビタミンが減るため、ビタミン不足が心配になるかもしれません。でも、ゆでてもビタミンがゼロにはなりませんし、ビタミンは野菜以外の食材からとることもできます。
また、ビタミンは薬剤で補うことも可能なので、心配な場合は主治医に相談しましょう。
●小松菜
生(100g):500mg
ゆでた後(88g):123㎎
●ブロッコリー
生(100g):460㎎
ゆでた後(111g):233㎎
●キャベツ
生(100g):200mg
ゆでた後(89g)82㎎
※1を基に算出
*青菜類はゆでるとカリウムが減りやすいのですが、かぼちゃ、アスパラガス、さやいんげんなど、ゆでてもあまりカリウム量が変わらない野菜もあるので注意が必要です
ゆでるほどではないですが、水にさらすことでもカリウムの量を減らすことができます。
なお、電子レンジなどでの加熱調理ではカリウムは減らせません。
肉・魚については、たんぱく質量が適量になるように調整すれば、自然とカリウムの摂取量を抑えられることになります。
「あれもこれも食べてはいけない」と考えると、食べることが楽しくなくなってしまいます。カリウムの多い食材を食べ過ぎないことと、カリウムを減らす調理を心がけ、バラエティー豊かな食事を楽しめるようにしましょう。
●カリウムを減らす調理のコツ
①下ゆでをする
炒める、揚げる、煮るなどの調理を行う前に、切った食材をたっぷりの湯で下ゆでします
②生で食べるものは水にさらす
ボウルに水をたっぷり張り、切った食材を入れて10分以上さらします
<下ゆで・水にさらすときのポイント>
・切断面からカリウムが流れ出やすくなるように、細かく切って表面積を増やす
・下ゆでしたり、水にさらしたりした後はざるにとり、水気をしっかり切る
・長時間水にさらすときは途中で水を変える
便秘は医師に相談し下剤の活用を
血液透析を行う人は、体内の水分を少なめにするように指導を受けるので、便が固くなりやすい傾向にあります。そのため、便秘に悩む人はとても多いのです。野菜やいも類は食物繊維が豊富なので、便秘の予防・改善に効果的な食材ですが、カリウム制限があるためとりにくく、食生活で便秘を改善するのは難しいかもしれません。腹痛や吐き気などの症状がなければ、毎日排便がなくても心配ありませんが、便秘による症状がつらい場合は主治医に相談し、下剤を効果的に使いましょう。
<参考>菅野義彦 病態監修『透析・腎移植の安心ごはん』(女子栄養大学出版部)
<参考>宮本佳代子 監修『腎臓病 透析患者さんのための献立集 改訂版』(女子栄養大学出版部)
※1 食品成分表2020年版(八訂)
文/東 裕美