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2020.12.8 更新

腸内の善玉菌を増やす、発酵食品とオリゴ糖

京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長

内藤裕二先生

腸内環境を正常化することが、慢性便秘症解消への近道に。食事の内容を見直して、善玉菌が優位になる腸内環境づくりを目指しましょう。

善玉菌が優位になる発酵食品を摂りましょう

「便秘のときは、ヨーグルトを食べるといい」という話を聞いたことはありませんか?
これはあながち嘘ではありません。「ヨーグルトなどの乳酸菌食品が有効」という研究報告があるのです。*1*2

乳酸菌とは、糖質に含まれるブドウ糖や乳糖などからエネルギーを得て、乳酸をつくる細菌の総称です。ヨーグルトのほか、市販の乳酸菌飲料、チーズ、ぬか漬け、キムチなどの発酵食品に含まれています。
乳酸菌がどうして便秘に有効かというと、腸内細菌のバランスが関係しているようです。

人間の腸内には、約100兆個もの腸内細菌がいるといわれています。腸内細菌には善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つがあり、乳酸菌は善玉菌に分類されます。
善玉菌が優位になると健康が維持されますが、そうでないと便秘をはじめとしたさまざまな疾患を引き起こすことがあるのです。

善玉菌は乳酸菌のほかにも、納豆に含まれる納豆菌、みそに含まれる麹菌、ヨーグルトに含まれるビフィズス菌など、たくさんの種類があります。いずれも発酵食品に含まれているので、積極的に取り入れたいですね。

善玉菌とセットで。エサとなるオリゴ糖にも注目

「ヨーグルトは毎日たくさん食べているのに、便秘が解消されない…」という人は、もしかしたら善玉菌のエサが不足しているのかもしれません。

善玉菌は、エサを与えることで活性化し、増殖が促されます。
善玉菌のエサとして代表的なものは、前述した食物繊維、そしてオリゴ糖です。

オリゴ糖は糖質の一種ですが、消化酵素ではほとんど分解されず、食物繊維と同様に消化・吸収されないまま大腸に届きます。これを難消化性のオリゴ糖といい、発酵食品と一緒に摂ることで、腸内の善玉菌を増やします。

オリゴ糖を含む食材としては、玉ねぎ、ごぼう、アスパラガス、ねぎ、にんにく、バナナ、大豆などがあげられます。また、市販のオリゴ糖を配合したシロップなどの食品を用いるのもいいでしょう。

善玉菌を含む食材と、善玉菌のエサとなる食材。セットで摂ることで、より効果が期待できます。

*1 滝井 寛,西嶋智彦,高見和代.ほか.Bifidobacterium animals subsp.lactis GCL2505を含有する発酵乳の摂取による便秘傾向を有する健常成人の排便回数,便性常,および糞便菌叢の改善.薬理と治療2012;40:657-665(ランダム)
*2 榎本稚子,矢澤和恵,竹内恭子,ほか.栄養・代謝 腹膜透析患者の便通に対する食物性乳酸菌の有用性に関する研究.腎と透析2010;69:520-524(ランダム)
<参考>『慢性便秘症診療ガイドライン2017』編集 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会(南江堂)

文/おいしい健康編集部

京都府立医科大学附属病院
内視鏡・超音波診療部 部長
内藤裕二先生

京都府立医科大学 消化器内科学教室 准教授。京都府立医科大学卒業。2015年より現職。専門は、消化器病学、消化器内視鏡学、消化管学、酸化ストレスと消化管炎症、生活習慣病、腸内微生物叢。国際フリーラジカル学会(SFRR)アジア President、米国消化器病学会(AGA)会員。主な著書に『便秘薬との向き合い方』(金芳堂)、『消化管(おなか)は泣いています』『人生を変える賢い腸のつくり方』(ともにダイヤモンド社)がある。

京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長 内藤裕二先生

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