次に食事内容について見ていきましょう。便秘の予防・改善のためにぜひ摂りたいのが食物繊維と発酵食品です。
食物繊維を1日18~20g摂りましょう
食物繊維は体内で消化されない成分なので、便としてすべて排出されます。そのため食物繊維を多く含む食材を食べると、必然的に便の量が増えます。すると便が大腸の粘膜を刺激するので蠕動運動も活発になります。また、食物繊維は腸内に長くとどまって、便の中に水分を取り込むため、便が硬くなるのを防いでくれます。
便秘解消には1日20gの食物繊維が必要とされています。ところが、厚生労働省作成の「日本人の食事摂取基準2020年版」によると、現在の日本人成人(18歳以上)における食物繊維摂取量の平均値は13.7 g/日。厚生労働省が掲げている摂取目標量である男性21g/日、女性18g/日を大きく下回っています。やわらかいものが好まれる現在の国内の食事事情からすると、食物繊維は意識しなければ、十分な量を摂れない栄養素のひとつです。
食物繊維は、豆類・野菜類・果実類・きのこ類・藻類に多く含まれます。とくに、そば・ライ麦パン・しらたき・さつまいも・切り干し大根・かぼちゃ・ごぼう・たけのこ・ブロッコリー・モロヘイヤ・糸引き納豆・いんげん豆・あずき・おから・しいたけ・ひじきなどは、1食あたり摂取する量の中に食物繊維が2~3gも含まれているので、これらの食材を毎日の取り入れると効率的に摂取できます。
食物繊維は、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維は、果物、こんにゃく、海藻類などに含まれており、水に溶けてゲル状になり、便をやわらかくして排便を促します。また、ブドウ糖の腸からの吸収速度をゆるやかにして、血中の糖やコレステロールの値を低下させます。腸内でビフィズス菌を増加させる働きもあり、便秘や下痢を抑える効果があります。
不溶性の食物繊維は、穀類、野菜、豆類、いも類などに含まれており、便のかさをふやし、腸の働きを活発にして便秘の解消と有害物質の排泄に効果があります。
同じ食物繊維でもそれぞれ働きが異なるので、どちらか一方だけではなく、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維をバランスよく摂ることが大切です。水様性食物繊維は不溶性食物繊維と比べて意識しないと食事に取り入れにくいので、とくに便秘気味の人はもずくやめかぶなどのネバネバ食品を積極的に摂るとよいでしょう。
善玉菌を増やして腸内環境を整えて
人間の腸には約1000種類、100兆個の腸内細菌が住んでいるといわれています。便秘の人の腸内細菌のバランスについては諸説ありますが、いわゆる善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌が腸内に増えることで、腸の動きがよくなり、便秘を改善する効果が期待されます。善玉菌を増やす方法として、次の2つの方法があります。
一つがヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物などから、生きた善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌を直接摂る方法です。これらの菌は腸内にある程度の期間は存在しても、住みつくことはないため、毎日続けて摂取することが大切です。逆にストレス、経口の抗生物質、食品添加物、肉など高脂肪・高たんぱくの食品などはいわゆる悪玉菌を増やして、腸内細菌の構成が異常になるので、注意しましょう。
もう一つが善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を摂って、善玉菌を増やす方法です。オリゴ糖は大豆、きなこ、たまねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガス、バナナなどの食品にも多く含まれます。また、市販のオリゴ糖を配合したシロップなどの食品を用いるのもいいでしょう。砂糖代わりに市販のオリゴ糖を摂っても構いませんが、オリゴ糖は急にたくさん摂ると下痢や腹部膨満感が起こることがあります。最初は控えめにして、おなかの調子を見ながら、徐々に増やすようにしましょう。
腸内環境が良好かどうかは、便を観察するとわかります。色は黄色から黄色がかった褐色で、においがあっても臭くなく、形状は柔らかいソーセージ状(バナナ状)になっていればまずは大丈夫。逆に黒っぽい色で臭い便は、腸内細菌のバランスが悪くなっているサインです。
<参考> 日本大腸肛門病学会編集「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版(改訂第2版)」(南江堂)
<参考> 松島誠ほか監修「食事療法はじめの一歩シリーズ 痔で悩む人の毎日ごはん」(女子栄養大学出版部)
<参考>「日本人の食事摂取基準」2020年版(厚生労働省)
文/高橋裕子