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2021.3.18 更新

日常生活を見直すと肛門の負担を軽くできます

医療法人恵仁会松島病院 大腸肛門病センター医師

松島小百合先生

医療法人恵仁会松島病院 大腸肛門病センター医師

紅谷 鮎美先生

「02 痔の三大疾患は「痔核」「裂肛」「痔ろう」です」で説明したように、痔の原因は「肛門がうっ血する」「肛門が切れる・破れる」「細菌感染を起こす」です。要するに、肛門に負荷をかけたり、免疫力が低下すると痔になりやすいということになります。
ここでちょっと日常生活を見直してみましょう。案外、私たちは気づかないうちに痔になりやすい生活をしているかもしれません。

日常生活の見直しポイント

痔になりやすい危険因子は次のとおりです。思い当たることがあったら、できるだけ早く改善しましょう。

◎長時間座り続ける
オフィスでのデスクワークやパソコン操作、また、長時間のテレビやゲームなどで座っている時間が長いとおしりに体重がかかり、肛門まわりの血流が悪化します。こまめに席を立って軽い体操をしたり、歩いたりするなどして体を動かすようにしましょう。

◎トイレでいきむ
排便のときに強くいきむと、肛門のうっ血や出血をきたすことがあります。何よりいきまなくてもすんなり排便ができるような便にすることが大切です。

◎肉体疲労
激しい運動や重労働の連続による肉体疲労は、筋肉に疲労物質をためて免疫力を低下させます。疲れすぎる運動や労働はなるべく避けて、適宜体を休めるようにして体力の回復につとめましょう。

◎ストレス
ストレスによって免疫力が低下すると、細菌に対する抵抗力が下がり肛門が炎症を起こしやすくなります。リラックスする時間を意識してつくるなど、自分なりにストレスを解消する方法を見つけましょう。

◎冷え
体が冷えると肛門周辺の血管が収縮してうっ血が起りやすくなります。夏場はエアコンでの冷やしすぎに注意する、保温グッズを使う、適度な運動をする、湯船にゆったりとつかるなど、意識して体を温めるようにしましょう。

◎よく噛んで食べる
よく噛んで食べることは、肥満を予防する、脳を活性化する、表情筋が鍛えられる、虫歯予防になるなど、多くのメリットがありますが、実は便秘解消の手段の一つとしても有効です。食事のときは、よく噛むことを意識しましょう。1口の咀嚼回数が30回以上の人に、快便が多いことがわかっています*1

◎刺激物の摂り過ぎ
唐辛子など香辛料の中でも消化吸収されにくいものを摂り過ぎると、便の中に刺激成分が残って、排便時に肛門に刺激を与えることがあります。
とくに痔の症状が出ているときは、激辛ラーメンやスパイシーな料理など、過剰に香辛料を摂取することは避けたほうがよいでしょう。

<参考> 日本大腸肛門病学会編集「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版(改訂第2版)」(南江堂)

<参考> 松島誠ほか監修「食事療法はじめの一歩シリーズ 痔で悩む人の毎日ごはん」(女子栄養大学出版部)

*1 山田五月,松本晴美,高橋律子ほか.大学生における慢性機能性便秘発現に及ぼす生活習慣との関連−横断的研究.栄養学雑誌2009;67:157-167(横断)

文/高橋裕子

医療法人恵仁会松島病院
大腸肛門病センター医師
松島小百合先生

医療法人恵仁会松島病院 大腸肛門病センター医師 松島小百合先生

医療法人恵仁会松島病院
大腸肛門病センター医師
紅谷 鮎美先生

医療法人恵仁会松島病院 大腸肛門病センター医師 紅谷 鮎美先生

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