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2021.3.12 更新

「目立たない働き者」の腎臓

東京医科大学病院 腎臓内科主任教授

菅野義彦先生

健康診断で「腎臓の機能が落ちています」と言われたことはありませんか? 「食生活に気をつけてください」と注意されても、何から取り組めばいいか分からないと感じることがあるかもしれません。
しかし、症状があらわれる頃には腎臓はとても弱っています。症状が出るほど病気が進まないようにするには、腎臓が体の中でどのような働きをしているのかを知って早めに対応することが、助けになります。
まずは腎臓の役割や、腎臓の調子をみる尿検査について説明します。

腎臓は尿を作っています

腎臓は腰の上あたりに2つある、握りこぶしくらいの大きさの臓器です。
腎臓の最も大切な仕事は、血液をフィルターでろ過して尿を作ること。ヒトが生きていると、必ず老廃物や余計な水分が出てきます。血液の中に含まれる老廃物や、いらない水分を尿として体の外に出すことが腎臓の大きな役割です。
このほか、体の中の水分量を調節したり、血圧を維持するホルモンを作ったりなどと、たくさんの大切な働きをしています。
かなり機能が落ちるまで目立った症状がなく、さまざまな役割を果たしている腎臓は、いわば「目立たない働きもの」です。

尿でわかる、腎臓の不調

腎臓の調子をチェックするには、まず尿を検査します。一般的に尿に含まれているたんぱく質の量(尿たんぱく)を調べると、腎臓がうまく働いているかがわかります。
腎臓が正常に働いていれば、たんぱく質のように体にとって必要な物は外に排出されません。尿にたんぱく質がたくさん含まれているということは、腎臓の調子が悪くなっている可能性があります。
尿たんぱくの検査結果が「−(1日0.15g未満)」なら正常です。
「±」「+」だと、健診センターから再検査のお知らせが来ます。その場合は、必ずもう一度検査を受けましょう。健康であっても、疲れているときや激しい運動の後には、一時的に検査結果が悪くなることがあります。それを確かめるために、再検査が必要になります。
「2+」が出たら、詳しい検査が必要になります。

では、腎臓が悪くなると、どんな困ったことが起きるのでしょうか。次の章で説明します。

<参考> 日本腎臓病学会編集「エビデンスに基づく CKD診療ガイドライン2018」(東京医学社)

<参考> 菅野義彦ほか監修「食事療法はじめの一歩シリーズ 腎臓病の満足ごはん」(女子栄養大学出版部)

<参考> 日本腎臓学会ほか編集「腎不全 治療選択とその実際」

<参考> 腎ライブラリ「たんぱく尿が出ていたら」

文/おいしい健康編集部

東京医科大学病院
腎臓内科主任教授
菅野義彦先生

1991年慶應義塾大学医学部卒業。同大学院医学研究科、米国留学、埼玉社会保険病院腎センター、埼玉医科大学腎臓内科、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て、2013年より現職。

東京医科大学病院 腎臓内科主任教授 菅野義彦先生

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