便秘を改善させるためには、どうして便秘になるかを知っておくと助けになります。まずは、便が出るメカニズムからお話しします。
便が出るメカニズムを知っておきましょう
私たちは食事をすると、口から食べ物が入り、胃や小腸(しょうちょう)を通ります。ここで消化吸収が起こります。
盲腸(もうちょう)から横行結腸(おうこうけっちょう)へと送られる間に水分が吸収され、大腸には残りかす(便)がたまります。
たまった便はすぐに排出されず、直腸(ちょくちょう)の手前にあるS状結腸(えすじょうけっちょう)にいったん留まります。
人間にはそもそも、食べ物を食べると腸が動くという神経反応が備わっています。
これは胃・結腸反射(い・けっちょうはんしゃ)と呼ばれ、大蠕動(だいぜんどう)という強い腸の動きにより、便を直腸へと運びます。
直腸に便が運ばれると、直腸が伸びて広がり、脳に便意が伝わります。
便意が起こると、脳から「排便せよ」という指令が出て、肛門括約筋(こうもんかつやくきん)が緩み、便が出ます。
とくに朝食後の胃・結腸反射が強いことが知られていて、「朝食後の時間をゆっくり過ごす時間をつくる」「便意がなくても毎朝トイレに入る習慣をつける」ことも重要です。
慢性便秘症の主な原因は大きく2つあります
排便のしくみがわかったところで、次は便秘の原因についてお話しします。
慢性便秘症の種類は、大きく分けて2つあります。器質性便秘と機能性便秘です。種類によって原因が異なることを知っておきましょう。
まずは器質性便秘について。これは大腸そのものに病気があることで起こります。
大腸が狭くなっていることで起こる狭窄性と、そうではない非狭窄性があります。
狭窄性の一例として、腫瘍ができて大腸が狭くなり、便の通りが悪くなることがあげられます。
次に、機能性便秘について。大腸に器質的な病気がないのに、排便機能がうまく働かなくて起こります。長い間、便秘に悩んでいる人の多くは、こちらに当てはまるのではないでしょうか。
排便回数や排便量が減少している排便回数減少型と、排便時に直腸内の便を十分量かつ快適に出せない排便困難型に分けられます。
排便回数減少型は、さらに大腸通過遅延型、大腸通過正常型に分けられ、排便困難型は、さらに大腸通過正常型、機能性便排出障害に分けられます。食事を摂取する量が不足している場合は、大腸通過正常型になります。
主に女性や65歳以上がなりやすい傾向に
慢性便秘症は、どんな人がなりやすいのでしょうか?
厚生労働省の2019年 国民生活基礎調査によると、便秘の自覚症状がある人の割合は、男性25.4%に対し、女性は43.7%。女性のほうが多いことがわかります。
なぜ女性に多いかについては、まだわかっていません。
考えられるのは、女性に多くみられる食習慣と、女性ホルモンの影響によるもの。
ダイエットで食事制限をした経験があったり、昼食の摂取が少なかったりする場合は、便秘になりやすいことがわかっています。
生理前や妊娠中に分泌量が増える女性ホルモン・プロゲステロンには、大腸の蠕動運動を低下させる作用があります。それが便秘の一因と考えられています。
とくに妊娠中はプロゲステロンの分泌量が増えることに加え、大きくなった子宮が腸を圧迫して動きが鈍くなる、運動不足になる、腸内の水分がからだに吸収されやすくなるなどの原因も重なり、便秘が起こりやすくなるといわれています。
女性はとくに、便秘に気をつけたいですね。
65歳以上の方の有訴者率をみてみると、約7割の方が便秘を訴えています。
年齢を重ねると、排便のための神経や筋肉の動きが低下することに加え、食事量や運動量も少なくなる傾向に。男性も増加していますので、65歳が近くなってきたら、便秘予防に努めたいですね。
<参考>『慢性便秘症診療ガイドライン2017』編集 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会(南江堂)
文/おいしい健康編集部