虚血性心疾患のひとつである「狭心症」は、心筋に血液を送る冠動脈の血流が不足する病気のこと。心筋が一時的に酸欠状態(虚血)になり、胸痛や息切れなどの症状が出ます。
4つの病気に分類され、発作が起きるタイミングで分類されるのが「労作狭心症」と「安静狭心症[冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症]」です。
残りは、冠動脈の血流が“完全”に不足する病気の「心筋梗塞」に進む危険度によって分類され、「安定狭心症」と「不安定狭心症」があります。
狭心症が起きた場合、薬剤治療と、ある程度の生活制限が大切です。しっかり治療すれば、支障なく日常生活を送れます。
ただし、悪化すると心筋梗塞に移行することもあるので、発作の状況をよく観察していつもと違うと感じたら、すぐに受診することが大切です。
締め付けられるような胸の痛みが特徴
締め付けられるような、圧迫されるような強い胸の痛みが突然襲ってくるのが狭心症です。胸以外に、みぞおちや背中などの痛みを感じる人もいます。
早期の診断・治療のためにも、下の症状をチェックして、同じようなことが繰り返し起こる場合は、循環器内科を受診しましょう。
□ 胸が締めつけられるような痛み
□ みぞおちの痛み
□ 背中の痛み
□ 歯の痛み
□ 肩から腕のしびれ・痛み
□ 胸焼け
□ のどの痛みや詰まり
発作が起きるタイミングによって2つに分類されます
狭心症には、発作がいつ起きるかによって「労作狭心症」と「安静狭心症[冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症]」の2つに分類されます。
「労作狭心症」は、急いで歩いていたり階段や坂を登ったりしたとき、重い荷物を持ったときなど、体に負荷がかかると症状が出る病気です。この症状は、通常5分以内に治まります。
原因は、運動時に必要な量の血液を届けることができないこと。心筋が酸素不足になり発作が起こります。
労作狭心症の最大の原因は、動脈硬化です。
動脈硬化とは、血管の通り道にプラーク(血管の内側の壁に、コレステロールが蓄積してできたコブ)がついたり、血栓(血の塊)が生じたりして、血管が詰まりやすくなった状態のことをいいます。
一方、睡眠中のとくに夜中から明け方に発作が起こるのが「安静狭心症[冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症]」です。冠動脈が突然けいれんするように極度に縮んで細くなって、血流が悪くなります。
おもな原因は喫煙、睡眠不足、ストレス、過度な飲酒、寒冷刺激などです。
心筋梗塞に進む危険度によっても、2つに分類されます
狭心症は、運動時、安静時といった発作のタイミング以外に、心筋梗塞に進む危険度によっても2つに分類されます。
そのひとつが、冠動脈を狭くしているプラークが安定している「安定狭心症」です。発作が起きるタイミング、発作の回数、痛みの強さ、継続時間などが一定しており、心筋梗塞に進む危険度が低いとみなされます。
安定狭心症に対して、心筋梗塞に進みやすい狭心症が「不安定狭心症」。
軽い動きをしても発作が起きたり、今までなんなくこなしていた動きで発作が起きるなど、症状が悪化している状態です。
不安定狭心症の場合、冠動脈の中にできたプラークの膜(血管の内側の壁)が破れやすい状態になっています。血管の内側の壁が破れて発生するのが血の塊、つまり血栓です。
血栓が血流をさまたげると症状が悪化します。そのまま放置して、冠動脈が完全にふさがれた状態になると、心筋梗塞が起きるのです。
心筋梗塞は、放置すると死に至るので、注意しなくてはいけません。下のような症状が出たら、大至急受診しましょう。
□ 最近新たに狭心症の症状、胸痛が出るようになった
あるいは、久しぶりにまた症状が出てきた
□ 症状が20分以上持続した
□ 気分が悪くなり、冷や汗を伴う
□ これまで起こっていた症状が、さらに起こりやすくなり回数が増えた
□ ニトログリセリン(狭心症の治療薬)が効きにくくなった
狭心症は、心筋梗塞に移行する可能性があるので、症状が重いときはもちろんのこと、軽い場合でも、一度医師に相談しましょう。
文/高橋裕子
編集/おいしい健康編集部