06

2022.9.28 更新

脈のリズムがおかしくなる「不整脈」

竹谷クリニック 院長

竹谷哲先生

「不整脈」は、脈拍のリズムがおかしくなる病気です。

脈拍とは、心臓の拍動(ポンプの動き)によって、血液を送り出すたびに動脈に伝わる周期的な運動のこと。運動をしたときや、緊張、興奮で自律神経の交感神経が活発に働くと速くなりますし、眠いときやリラックスしているときは遅くなります。このように、体の状況に合わせて変わるのが脈拍のリズムです。

脈拍は、身体の異常を知るサイン。速くなる、遅くなる、不規則になるなど、普段とは違った脈の速さから病気が見つかることもあります。

不整脈は、脈が速くなる/遅くなる/不規則になる病気

心臓は、刺激伝導系とよばれる電気の流れによって動きがコントロールされ、正常時には血液を一定のリズムで送り出しています。人体のペースメーカーといわれる「洞結節」から電気信号が発生していて、「房室結節」という場所にたどりつくことで心室が収縮を行います。
健康な成人の場合、安静時の脈拍は1分間に60~80回くらいです。

不整脈は、その電気の流れや発生の異常によって起こる心臓の拍動リズムの乱れです。心臓の拍動が異常に速くなる「頻脈不整脈(頻脈)」(脈拍100回/分以上)と、逆に遅くなる「徐脈性不整脈(徐脈)」(脈拍50回/分以下)拍動のタイミングがずれる「期外収縮」と大きく3つに分けられます。

このうち、最も多くみられるのが「期外収縮」です。極端な頻脈や徐脈になると、心臓が十分に血液を送り出すことができず、体の働きを阻害することがあります。

不整脈の症状

一拍だけ早いタイミングで心臓が収縮する不整脈は期外収縮です。脈がとぶ、一瞬だけドキッとする、胸が一瞬つまる感じがする、などの症状が出ることがありますが、多くは問題ありません。
本人が自覚できないことも多く、30歳を超えるとほぼ全員に認められるようになり、加齢とともに増加します

脈が速くなったり、乱れたりするときによく出る症状が「動悸」です。
全身に十分な血液を送り届けることができないために、息切れや息苦しさ、めまいを起こしたり、重症の場合は失神したり、突然死することもあります。むくみやチアノーゼ(皮膚が青っぽく変色すること)が起こることもあります。

極端な徐脈にも注意が必要です。心臓のポンプ機能が数秒以上途絶えると、脳への血流が低下することによって、気を失う、目の前が暗くなる、めまいといった症状が発生します。

危険な不整脈に注意

不整脈が長期間持続すると、心臓の働きが悪くなることがあり、息切れやむくみなど心不全の症状が発生します。そのほか、胸の痛みや圧迫感が、頻脈や期外収縮で発生することも。
また中には下記のような、治療が必要な不整脈や、命の危険がある不整脈もあります。

◎心室細動
心室が不規則にけいれんして、血液を全身に送り出せず、数分以内に死に至る非常に危険な不整脈です。正常な心臓の動きを取り戻すまで、心臓マッサージを継続して行ない、電気的除細動という治療をします。心室細動の予防のために抗不整脈薬を用いることもあります。

◎心室頻拍
なんらかの原因により、心室で1分間に100回以上の電気刺激が発生することで起きる発作です。心室頻拍が続くと、全身の臓器に十分な血液が運ばれなくなり、意識消失や命にかかわることもある重篤な不整脈です。薬物治療またはカテーテルアブレーション治療(※)を行います。
※カテーテルアブレーション治療:頻脈の原因となっている不規則な電気信号を止める治療。

◎心房細動
心房が異常に細かく動くことで、うまく血液を全身に送り出せなくなります。命の危険はありません。しかし、生活の質が低下したり、心不全や脳梗塞のリスクがある場合は、薬物治療またはカテーテルアブレーション治療を行います。

◎発作性上室性頻拍
発作的に頻脈になります。内服薬による治療が中心となりますが、症状の程度などによっては手術を検討することもあります。

不整脈が起こる原因

不整脈の原因にはいくつかあります。

◎加齢
不整脈は加齢が原因のひとつで、60歳以上になると増えてきます。

◎心臓病
不整脈の発生に大きく影響するのが心臓病で、心筋梗塞、心筋症、心不全、心臓弁膜症などがあげられます。

◎高血圧
心臓病以外で特にリスクが高いのは、高血圧です。血圧が高くなると心臓の負担が増え、心臓が大きくなる心肥大になって不整脈が起こりやすくなります。

◎生活習慣
悪い生活習慣も不整脈の原因のひとつ。ストレスや睡眠不足、過労、喫煙、アルコールやコーヒーのとりすぎなどは、交感神経を刺激して電気の発生に異常を及ぼし、脈が乱れることがあります。肥満の人も不整脈になりやすいことがわかっています。

◎薬
かぜ薬、精神病薬、抗うつ薬、抗不整脈薬(頻脈の治療薬)、高圧薬などの薬の中にも不整脈を悪化させたり、新たな不整脈を発生させたりするものがあります。医師から薬を処方されるときは、不整脈があることや、処方されているほかの薬を医師に伝えましょう。

◎そのほか
COPD(慢性閉塞性肺疾患)など、肺の病気や甲状腺の病気なども原因になることがあります。

病院に行って原因を突き止めましょう

健康な人でも、1日に数回の不整脈が起こることがありますが、心配ない場合がほとんどです。頻脈になっても、自然に元に戻る場合も心配いりません。

とはいえ、不整脈も早期発見と治療が大切です。なんらかの自覚症状があれば、循環器内科で原因を調べてもらうのはもちろんのこと、自覚症状がなくても健康診断などで定期的に検査を受けることをおすすめします。

自分で脈拍をとってみましょう

自分の健康管理として安静時に脈拍をとってみましょう。1分間の脈拍数が約60~80回より多いか少ないか、もしくは不規則になっているかを確認します。

普段から脈拍をとる習慣があると、不整脈を感じているときの脈拍の状態がわかります。また、とくに症状がないときでも不整脈が認められれば、病気の早期発見につながります。

【脈拍のとり方(脈拍数の基準:60~80回/分)】
1 人差し指・中指・薬指の先端を反対の手の親指側の手首に当てます。
2 脈拍を確認したら、規則的か、抜けがないかをチェックします。
3 1分間の脈拍数を数えます。規則的な脈であれば、15秒間の脈拍数を数えて4倍すると1分間の脈拍数になります。

<参考> 「不整脈」(一般社団法人 日本循環器学会)

文/高橋裕子

編集/おいしい健康編集部

竹谷クリニック
院長
竹谷哲先生

1990年兵庫医科大学医学部卒業。大阪大学医学部第一外科入局後、大阪労災病院にて消化器外科、心臓外科に従事。1998年医学博士取得。大阪大学心臓血管外科、日本学術振興財団研究員、先端医療財団主任研究員として循環器領域の臨床、研究に従事。2008年竹谷クリニック理事長に就任。2017年より大阪大学大学院医学系研究科招聘教授。

竹谷クリニック 院長 竹谷哲先生

医師の指導のもと栄養指導を受けている方は、必ずその指示・指導に従ってください。