心臓病の食事療法の基本は、高血圧や脂質異常症、糖尿病、動脈硬化、肥満など、病気の原因となるものを予防する食生活です。
栄養バランスのよい食事をとることが大切で、塩分や脂質、エネルギーのとりすぎには注意しましょう。
食事に気をつけるというと、「食べてはいけないものばかりで楽しくない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。でも大切なのは、自分の体に合った食生活を送ることです。正しい知識を持って適切な食材を選び、調理や味つけを工夫することで、これまでどおりおいしく食べることができます。
栄養バランスのよい食事をとる
主食+主菜+副菜の組み合わせを基本として、5大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、 ミネラルと、第6の栄養素といわれる食物繊維をしっかりとりましょう。
これらの栄養素を、毎食バランスよくとることが大切です。最近注目されている食物繊維には、血中のコレステロールを下げる効果が期待されます。
食物繊維が含まれる野菜、海草類、豆類、いも類、こんにゃくなどをメニューにとり入れて、積極的に食べるようにしましょう。
塩分を控える
心臓病の食事療法で注意が必要なのは、「塩分摂取量」です。塩分をとりすぎると、血中のナトリウム濃度が高くなります。すると、体は血液中に水分を取り込み、濃度を薄めようとするため、血液の量が増加して血圧が上昇し、動脈硬化を進行させます。塩分制限は、心臓病予防の要と考えていいでしょう。
厚生労働省の調査によると、日本人の成人の1日平均食塩摂取量は男性10.9g、女性9.3gですが(※1)、厚生労働省が提示している目標量は、成人男性が7.5g未満、女性が6.5g未満です。さらに高血圧の人は、1日6g未満にすることがすすめられています(※2)。
(参考:食塩は、小さじ1杯で約6gです)
「塩分が少ない食事はおいしくない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、下記のような方法でおいしく食べることは可能です。
また薄味に慣れていくと、素材そのものの味を楽しめるようになります。ぜひ工夫して減塩に取り組みましょう。
【減塩のポイント】
◎レモン、すだち、ゆず、かぼすなどの柑橘系の酸味をきかせる。
◎唐辛子やこしょう、カレー粉などの香辛料や、しょうが、みょうが、青じそなど香りが強い食材、ハーブの味で食べる。
◎漬け物・汁ものは、食べる量と回数を減らす。麺類の汁は残す。塩分を含む調味料は、かけずに「つける」。
◎あじの開きや塩鮭などの加工食品や、カップ麺などのインスタント食品はなるべく食べない。
◎市販品は、食品表示の食塩やナトリウム量をチェックすることを習慣にする。
[「ナトリウム」と表示されている場合は、ナトリウム(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)で計算できます]
減塩で注意したいのは、食事量の全体まで減らしがちだということ。たんぱく質が不足すると、筋肉が衰えフレイルに陥りやすく、運動・認知機能が低下しやすくなります。あくまで栄養バランスのよい食事の中で、塩分を控えるように心がけることが大切です。
食塩は、加工食品などにも含まれているため、実際に自分がどのくらいの塩分をとっているのか把握するのは難しいものです。
そこで、医療機関の尿中塩分量の測定検査を受けることをおすすめします。この検査によって、前日とった塩分量を知ることができ、減塩の参考にすることができます。一度かかりつけ医に相談してみましょう。
脂質やエネルギーのとりすぎに注意
脂質やエネルギーのとりすぎは、肥満や高血圧、脂質異常症、糖尿病を招き、心臓病の原因になります。
肥満気味の方は、脂質や炭水化物を減らすことから始めていきましょう。また、よくかんで食べるようにすると、食べすぎを防げますし、おなかも満足します。
肉は、脂身の少ない赤身肉や鶏肉がおすすめです。天ぷらやフライなどの油っこいもの、菓子パン、麺類、スナック菓子など、脂質、炭水化物ともに多く含まれるものは、たまのお楽しみ程度にして、習慣的に食べることはやめましょう。
一方、青魚に多く含まれるオメガ3系多価不飽和脂肪酸を摂取することで、コレステロールを下げ、動脈硬化のリスクを下げることが期待されています。青魚以外にも、アマニ油やエゴマ油などに含まれているので、食事に取り入れてみましょう。この脂肪酸は、加熱に弱いのでドレッシングとして使うと効率よくとれます。
健康的な食事パターンを習慣にする
日本人の心臓病が増えている一因は、食の欧米化にあります。和食は、世界でも認められた健康的な食事です。普段の食事を和食中心に戻すことで、心臓病を予防することが期待できます。
【おすすめの食事パターン(※3)】
2 肉類や動物性油脂の摂取量を減らす。
3 甘い飲み物やお菓子類などをなるべくとらない。
今まで欧米化された食事をしてきた人が、急に食事パターンを変えるのは難しいかもしれません。その場合は、「朝食は和食にする」、「おやつのクッキーを果物に変える」など、できることからチャレンジして、徐々に移行していくとよいでしょう。
※3「食事に気をつけよう」(一般社団法人 日本循環器協会)より抜粋
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文/高橋裕子
編集/おいしい健康編集部