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2022.9.28 更新

心臓に負担がかからない生活のポイント

竹谷クリニック 院長

竹谷哲先生

心臓病は、生活習慣の改善によって予防したり、進行を抑えることができます。ポイントは、心臓に負担をかけないこと、そして原因となる動脈硬化を進行させないことです。禁煙や禁酒(節酒)はもちろん、適度に運動し、ストレスをためこまない生活を送りましょう。

生活習慣の改善は、心臓病予防になるだけではなく、健康寿命を延ばすことにもなります。また、現在はとくに症状が出ていない人も1年に1回の健康診断を受けて、病気の早期発見に努めるようにしましょう。

たばこはやめる

国立がん研究センターの多目的コホート研究では、たばこを吸う人は吸わない人よりも3倍虚血性心疾患になりやすく、心筋梗塞に限れば4倍なりやすいと報告されています(※1)。

その理由は下記のとおりです。喫煙は、心臓病のリスクを格段に上げます。ぜひとも禁煙をおすすめします。

【喫煙が心臓や血管に負担をかける理由】
◎喫煙は交感神経を刺激し、血圧を上昇させ、動脈硬化を進行させる。
◎たばこに含まれる一酸化炭素が、血中に増えて酸欠状態になるため、心拍数が増えて心臓に負担をかける。
◎有害物質が血小板に作用し、血栓(血の塊)を作りやすくする。
◎糖尿病を悪化させ、コレステロールを上昇させるため、血管が詰まりやすくなり、心筋梗塞のリスクが高まる。

※1「喫煙と虚血性心疾患発症との関連について」(調査期間2005~2016年)(国立研究開発法人 国立がん研究センター 多目的コホート研究)

飲酒を控える

過度な飲酒も心臓病のリスクを高めます。できれば禁酒が理想ですが、難しければ飲み過ぎない程度に適量を守りましょう。

適量(※2)とは、男性の場合、1日の平均純アルコール摂取量が20g程度。目安としては、ビール中ビン1本、日本酒1合、チューハイ(7%)350ml缶1本、ウイスキーダブル1杯です。女性や高齢者の場合は、これより減らすべきとされています。

【飲酒が心臓や血管に負担をかける理由】
◎不整脈を誘発したり、心不全を発症させることがある。
◎血圧を上昇させるので高血圧になり、動脈硬化を進行させる。
◎中性脂肪を増やして心筋梗塞のリスクを高める。
◎安静狭心症[冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症]の発作が起こりやすくなるという報告もある。

※2「飲酒のガイドライン」e-ヘルスネット(厚生労働省)

質のよい十分な睡眠をとる

高血圧や糖尿病、心筋梗塞、狭心症、不整脈などの心臓病になりやすいといわれているのが寝不足です。起きている間は、交感神経が活性化しているので、血管が収縮して血圧が上がります。また血糖を上昇させる「糖質コルチノイド」が過剰に分泌され、高血糖になります。つまり、寝不足は、高血圧と糖尿病の原因になります。

質のよい睡眠をとるコツは、毎日決まった時間に規則正しく寝ることです。そうすることで、体内時計がうまく働きます。体内時計の働きで重要なものが、前もってホルモンの分泌などを行い、睡眠に備えてくれること。規則正しい睡眠習慣によって体内時計が整い、質のよい睡眠につながります。
理想の睡眠時間は、人それぞれといわれています。10代は8〜10時間、20〜50代は6.5〜7.5時間、60代以降は6時間弱を目安にしましょう。

肥満の方に多い「睡眠時無呼吸症候群」は、心臓病のリスクのひとつ。大きないびきの後に数十秒間も呼吸が止まることで、酸欠になって苦しくなり、心拍数も血圧も上がります。それが一晩に何回も繰り返されるので、血圧が下がることがなく、高血圧が悪化し、不整脈や心筋梗塞、心不全などになるリスクが高くなります。
いびきが大きい、睡眠中に呼吸が止まる、日中眠いなどの症状がある人は早めに検査を受けて適切な治療をすることをおすすめします。

適度な運動をする

適度な運動習慣は、生活習慣病を予防すると同時に動脈硬化のリスクを減らし、心筋梗塞などの心臓病を予防します。運動は、「血圧や血糖値を下げる」、「肥満を解消する」、「コレステロールを下げる」、「自律神経のバランスを整える」などのさまざまな効果が期待できます。

運動をすれば筋肉が発達し、エネルギーを消費するので太りにくい体になります。発達した筋肉は糖を積極的に取り込むため、血糖値を下げる効果があります。

適度な運動とは、「軽い」または「中程度」の有酸素運動です。
もっともおすすめなのは、誰でも気軽に始められるウォーキング。できれば毎日、少なくとも週3回のペースで続けると、体脂肪が効率よく燃焼され、血糖値や血圧が下がり、心臓への負担を減らすことができるでしょう。
最初は1日30分程度にして、少しずつ距離や時間を増やしていくと、骨格筋が鍛えられ、心臓の負担が軽くなります。軽いエアロビクスやダンス、サイクリングなどの有酸素運動も効果的です。

ただし、心臓病の治療中の人、心臓病を疑う症状がある人は、必ず医師に運動の種類や時間、強度などについて相談してから始めましょう。
無理をすると心不全が悪化する危険があります。

適正体重を維持する

肥満は、睡眠時無呼吸症候群などになりやすく、心臓に負担がかかるといわれています。さらには、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を招き、動脈硬化のリスクも上がります。現に肥満の方は、狭心症や心筋梗塞、心房細動を発症しやすくなることがわかっています。

とくに注意が必要なのは、内臓周りに脂肪がたまる内臓脂肪過多肥満です。おへその位置でおなか周りを測り、男性では85cm、女性で90cm以上の人は、内臓脂肪の蓄積があると考えられます。

内臓脂肪は、食事や運動で体重を減らすことで、比較的簡単に減らせます。まずは自分の肥満度を知り、適正体重に近づくように減量に努めましょう。

肥満の目安になるのがBMI。日本肥満学会の定めた基準では、18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」です。BMIが22になるときの体重が標準体重で、最も病気になりにくい状態であるとされています。BMIは次の計算方法で算出します。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

ストレスを上手に解消する

ストレスがかかる生活は、交感神経が優位になることが多く、その結果、血管を縮めて血圧を上昇させます。

なるべくストレスがかかる生活を避けつつ、「ストレスがかかったときはすぐに休む」、「趣味や好きなことをして気分転換をする」、「軽い運動をする」など、自分なりの解消法を見つけて習慣にするようにしましょう。

文/高橋裕子

編集/おいしい健康編集部









竹谷クリニック
院長
竹谷哲先生

1990年兵庫医科大学医学部卒業。大阪大学医学部第一外科入局後、大阪労災病院にて消化器外科、心臓外科に従事。1998年医学博士取得。大阪大学心臓血管外科、日本学術振興財団研究員、先端医療財団主任研究員として循環器領域の臨床、研究に従事。2008年竹谷クリニック理事長に就任。2017年より大阪大学大学院医学系研究科招聘教授。

竹谷クリニック 院長 竹谷哲先生

医師の指導のもと栄養指導を受けている方は、必ずその指示・指導に従ってください。