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2022.9.28 更新

心臓病にはさまざまな種類があります

竹谷クリニック 院長

竹谷哲先生

心臓病は、がんに次ぐ日本人の死因の2位(※1)で、今もなお患者数は増え続けています。心臓病のおもな原因は、加齢のほか、塩分が多い食事、喫煙、睡眠不足、運動不足などの生活習慣の影響によるものです。
「突然死」さえ招くこともある病気ですが、生活習慣に注意することで防げることもあります

心臓病になると、心臓の機能が十分に果たせなくなり、さまざまな症状が現れます。まずは心臓の構造と働きについて理解しておきましょう。
そのうえで罹患者が多い心臓病の種類ついておおまかな説明をします。

※1「令和3年(2021年)人口動態統計月報年計(概数)の概況」(厚生労働省)

心臓は、全身に血液を循環させる重要な臓器です

血液には、体のすみずみまで酸素や栄養素を行き渡らせ、二酸化炭素を回収するという役割があります。その血液を、ポンプとして絶えず全身に循環させているのが心臓です。
このように心臓は、人が生まれてから死ぬまで休みなく働き続ける、なくてはならない臓器です。

心臓は、ほとんどが「心筋」という筋肉でできています。心臓の内部は「右心房」「左心房」「右心室」「左心室」の4つの部屋に分かれています。
左右の間にある壁が「心房中隔」と「心室中隔」です。また、心房と心室にある血液の出口には、逆流を防ぐ「弁」があります。

ポンプから送り出される血液は、血管の中を流れていきます。心臓と全身をつなぐ血管は「大動脈」と「大静脈」、心臓と肺をつながる血管は「肺動脈」と「肺静脈」です。
血液は、「心臓→大動脈→全身→大静脈→心臓→肺動脈→肺→肺静脈(→心臓)」の順に流れていきます。
そして、1日に10万回もの収縮と拡張を繰り返す心臓(心筋)に必要な酸素や栄養素を運んでいるのが、心臓の表面を冠のように覆っている「冠動脈」です。

おもな心臓病の種類

ここからは、おもな心臓病の種類について簡単に説明します。とくに患者数が多い虚血性心疾患、心臓弁膜症、心不全、不整脈については、02~06で詳しく紹介します。

【虚血性心疾患】
心臓病(心疾患)の大部分を占めているのが「虚血性心疾患」。
心筋に血液を送る冠動脈の血流が悪くなって、心筋が酸素・栄養不足になる病気です。「狭心症」と「心筋梗塞」があります。
 

※狭心症について、詳しくは、02冠動脈からの血流が不足して起こる「狭心症」
※心筋梗塞について、詳しくは、03心臓に血液が届かなくなる「心筋梗塞」

【心臓弁膜症】
4つの弁のうち、1つ以上の弁の働きが低下して、心臓が十分に血液を送り出せなくなってしまう病気です。
弁膜の開きが悪くなり、血液が十分に流れなくなる「狭窄症」と、弁の閉じ方(閉鎖)が不完全なために血液が逆流する「閉鎖不全症」があります。
 

※詳しくは、04心臓の弁の働きが悪くなって起こる「心臓弁膜症」

【心不全】
心臓のポンプ機能が低下し、全身に必要な量の血液を送り出せなくなった状態です。
全身の血液量が不足するため、息切れやむくみが起こり、徐々に悪化します。
ほかの臓器に異常が起こったり、心臓が正常に働かなくなったりすることもあります。
 

※詳しくは、05心臓の機能が落ちた状態の「心不全」

【不整脈】
心臓の収縮を起こす仕組みにトラブルが起こり、脈が乱れ、動悸やめまいが起こる病気です。
脈が速くなる、遅くなる、リズムがバラバラになるなど数種類あり、中には突然死につながる危険なものもあります。
 

※詳しくは、06脈のリズムがおかしくなる「不整脈」

【心肥大】
高血圧の状態が続いて心筋が厚くなり、心臓の働きが低下して全身に十分な血液が送り届けられなくなる病気です。
心筋が厚くなるものと、心室の内側が広がるものがあります。
動悸、呼吸困難、胸痛などの症状が出ますが、突然死を引き起こすこともあるので注意が必要です。

【心筋症(突発性心筋症)】
心筋の異常による病気で、原因は不明です。
心筋の収縮力が低下し、左室内腔が大きくなる「拡張型心筋症」と、左心室の筋肉が分厚くなる「肥大型心筋症」があります。
拡張型心筋症でよくみられる症状は、息切れや呼吸困難、全身のむくみ、喘鳴(ぜんめい:呼吸をするときに、ヒューヒュー、ゼーゼーなどと音がする症状)などの心不全の症状です。
肥大型心筋症は、症状がない場合もありますが、心不全の症状が突然現れる人もいます。

【先天性心臓病】
生まれつき心臓や血管の形状に異常があることで起こる病気の総称
「心房中隔欠損症」、「肺動脈弁狭窄症」、「動脈管開存症」などがあります。
 

●心房中隔欠損症
先天性心臓病で一番多いのが、心臓の左右の心房の間の壁(心房中隔)に穴が開いている心房中隔欠損症。動悸、息切れ、顔のむくみなどの自覚症状が出るのは、40歳を過ぎてからのことがほとんどです。
 

●肺動脈弁狭窄症
肺動脈弁が狭くなって肺への血液が流れにくくなることで、心臓に負担がかかる病気です。軽症の場合は無症状で、中等症以上の場合は、加齢にともなって心不全や不整脈を起こします。乳児期に心不全症状を起こすと、突然死することもあります。
 

●動脈管開存症
動脈管とは、胎児の全身に血液を送るための肺動脈と大動脈をつなぐ小さな血管です。動脈管は通常、産後48時間以内に自然になくなりますが、この病気の場合、なくならずに残ってしまいます。残った動脈管が太いと、子どものうちに心不全の症状が出ますが、さほど太くない場合は、症状が出ないまま成長することもあります。

このように、心臓病にはさまざまな種類があります。気になる症状がある場合は、医師に相談しましょう。

文/高橋裕子

編集/おいしい健康編集部









竹谷クリニック
院長
竹谷哲先生

1990年兵庫医科大学医学部卒業。大阪大学医学部第一外科入局後、大阪労災病院にて消化器外科、心臓外科に従事。1998年医学博士取得。大阪大学心臓血管外科、日本学術振興財団研究員、先端医療財団主任研究員として循環器領域の臨床、研究に従事。2008年竹谷クリニック理事長に就任。2017年より大阪大学大学院医学系研究科招聘教授。

竹谷クリニック 院長 竹谷哲先生

医師の指導のもと栄養指導を受けている方は、必ずその指示・指導に従ってください。