02で説明した狭心症は、心筋につながる冠動脈に少量でも血液が流れている状態です。
一方、「心筋梗塞」は、血管内に血栓(血の塊)ができ、血流が途絶えてしまった状態のことです。血液が届かなくなることで、心筋の壊死が起きます。壊死の部分が大きくなると命にかかわるため、大至急治療を始めなければなりません。
そうならないために大切なのは、予防策を立てること。心筋梗塞の発作は、起こりやすい時間帯や季節があるので、目安にしながら予防につとめましょう。
激しい胸の痛みが起こります
心筋梗塞は、冠動脈にできたプラーク(血管の内側の壁に、コレステロールが蓄積してできたコブ)が破れ、そこに血栓ができて血管をふさぐことで起こる病気です。
完全に冠動脈が詰まってしまい、その先に血液が流れなくなってしまいます。
心筋梗塞の前兆とされる症状は、胸痛、胸部の圧迫感、胸やけなどです。
ほかにも下記のような症状が突然重なって発作が起こります。痛みは狭心症よりも激烈に強く出るのが特徴です。
□ 胸がやけるように重苦しい
□ 胸が押しつぶされる、締め付けられるようになる
□ 冷や汗が出る
□ 吐き気がある・吐く
□ 症状が10分~数時間続く
血流が30分以上途絶えたままになると、血液が供給されない心筋は、やがて酸素不足で壊死してしまいます。一度壊死した心筋は元に戻りません。
そして時間とともに壊死の範囲が広がり、心臓の働きは低下していきます。6時間ほどすると、その周辺の心筋はすべて壊死して死に至ります。
心筋梗塞の治療は、発作から6時間が勝負
とくに「痛みが異常に強いとき」、「安静時に初めて痛みが起きたとき」、「狭心症に効果があるニトログリセリンを使っても痛みがおさまらないとき」、「痛みが15分以上続くとき」は緊急事態です。
心筋梗塞を疑って、すぐに救急車を呼びましょう。
壊死した心臓は、回復しません。したがって、心筋梗塞の治療は、詰まった血管の血流を一刻も早く再開させることが重要です。発作が起きてから1~2時間以内に行うのがベストですが、発作が起きてから6時間が勝負といわれています。
時間内に治療を開始すれば、多くの場合、心臓のダメージを減らすことができます。
心筋梗塞による合併症を起こすことも
心筋が壊死した範囲が狭いときは、まだ十分に心臓の働きを補うことができます。
しかし、範囲が多い場合は、血液を送り出すポンプの力が弱くなってしまうため、次のような今後の生活に影響を与える合併症が起こる可能性があります。
心筋の一部が壊死してしまい、心臓の働きが著しく低下する病気です。肺への血流が悪くなって肺に水が溜まり、呼吸困難、息苦しさ、息切れなどの症状がみられます。
心筋が壊死して心臓のポンプのリズムが崩れると、心室頻拍、心室細動などの頻脈(脈が速くなる状態)や洞不全症候群、房室ブロックなどの徐脈(脈が遅くなる状態)などの不整脈が起こります。
壊死した心筋に圧力がかかり、心臓が破れてしまう状態です。
一刻も早く治療しないと死に至ります。
心筋梗塞の発作が起こりやすい時間帯と季節
心筋梗塞は起こりやすい時間帯と季節があります。それらを知り、事前に予防策を立てることが大切です。実践することで、心筋梗塞の予防につながります。
副交感神経が優位に働くのが睡眠です。朝起きると、1~2時間後に交感神経が優位になり、血圧が上昇すると考えられています。この血圧の上昇が、想定される心筋梗塞の原因のひとつです。ほかにも、睡眠中は水分不足になるので、血液が固まりやすいことも原因と考えられます。
「就寝前と起床後に1杯の水を飲む」、「起床後すぐは急激な運動を避ける」、「午前中はゆっくり過ごす」などの習慣をつけるとよいでしょう。
心筋梗塞が起こりやすいとわかっているのは、冬の7度以上の温度差がある環境です。温度差から起こる血圧の乱高下や、寒さで心臓の冠動脈が過剰に収縮し、血流が止まることが原因と考えられています。
「布団の中から寒い部屋に出るとき」、「暖房がきいた温かい室内から屋外に出るとき」、「脱衣所から浴室に入るとき」など、 温度差がある場所に移動するときが肝心です。そのようなときは、あらかじめ移動先を温めたり、服を着こんだりして、温度差がでないようにしましょう。
文/高橋裕子
編集/おいしい健康編集部