「我慢していれば、そのうち治るだろう」「受診するのは恥ずかしくてイヤ」…。誰にも言えずに、痔に悩まされている人は多いはず。
「たぶん痔だろう」と思っていても、どんな症状で、どの程度のものなのかわからないままでいる人も多いのでは?
痔とはどんな病気なのか、肛門はどんな構造になっているのか、まずは正しい知識をもちましょう。
痔とは肛門の周囲に起こる良性の疾患です
痔とは、肛門の周囲に起こる良性の疾患の総称です。日本人の3人に1人は痔に悩んだことがあるといわれています。実際に軽い痛み程度なら、経験したことがある人も多いのではないでしょうか?
私たちを悩ませる痔は、肛門という直接目に見えにくいところにできます。痔を理解する第一歩として、肛門の構造を知っておきましょう。
肛門は複雑な構造になっています
私たちがおしりの穴といっているのは、正確には「肛門縁」といい、肛門のいちばん外側に当たる部分。
では肛門は?というと、お尻の穴から直腸の末端とつながったところまでを指します。だいたいおしりの穴から2〜4cmくらいのところまでです。
おしりの穴を形成する皮膚は、肛門縁から2~4㎝ほど奥に入ったところで直腸につながっています。その直腸の粘膜と、おしりの皮膚がつなぎ合わさったギザギザの溝を「歯状線」といいます。
歯状線を境に奥の部分は、知覚神経がないために痛みを感じませんが、お尻の皮膚に近い部分は、皮膚と同じで知覚神経がたくさんあるため痛みを感じます。
肛門から歯状線の間の皮膚の部分を「肛門管上皮」といいます。普段は無意識のうちに肛門を締めている「内肛門括約筋」と、意識的に肛門を締めている「外肛門括約筋」という2つの筋肉が取り囲んでいます。
そのため、便をするとき以外は、肛門から便が漏れ出ることはありません。健康な肛門括約筋は、非常に滑らかで、しこりや筋っぽいところはありません。
歯状線の周囲には「肛門腺窩(こうもんせんか)」というくぼみがあり、ここに細菌感染して化膿すると、痔ろうの原因となります(痔ろうは次の「02 痔の三大疾患は「痔核」「裂肛」「痔ろう」です」で詳しく説明します)。
直腸の下部周辺には、静脈が網状に集まり、肛門をぴったりと締めるクッションのような役割をする「内痔静脈叢(ないじじょうみゃくそう)」があります。
<参考> 日本大腸肛門病学会編集「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版(改訂第2版)」(南江堂)
<参考> 松島誠ほか監修「食事療法はじめの一歩シリーズ 痔で悩む人の毎日ごはん」(女子栄養大学出版部)
文/高橋裕子