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2021.6.10 更新

健診結果から自分の健康状態を把握しましょう

現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長

岡田定先生

職場や住んでいる自治体などで受ける健康診断。健診の結果は、どのように見ればいいでしょうか。
健診結果の見方を知っておくと、自分の健康状態を把握するのに役立ちます。
ここでは、法律で決められている「一般定期健診」の主な検査について、どのようなことがわかるのかを説明します。

血液検査でわかる様々な病気の有無やリスク

血液にはたくさんの物質が溶けているため、血液検査では多くの病気の有無やリスクがわかります。

●腎機能…クレアチニン、eGFR(推算糸球体ろ過量)
腎機能の状態を表すのが、クレアチニン検査です。
クレアチニンは、血液中にある老廃物のひとつ。この老廃物を体の外に出すのが、腎臓の役目になります。そのため、クレアチニンの数値で腎機能をみるのです。
クレアチニンは、腎機能が落ちると体の外に出にくくなるため、数値が上がります。

ほかにもeGFRという検査があります。この数値が示すのは、クレアチニンが体の外に出た量です。つまり、腎機能が落ちると数値が下がるのです
腎機能検査について詳しく知りたい方は「02 健診で腎機能の状態を知ることが重要です」、腎臓病について詳しく知りたい方は「腎臓病の食事のきほん」をご覧ください。

●脂質…HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)
コレステロールや中性脂肪は、心筋梗塞や脳梗塞など、「動脈硬化」によって起こる病気のリスクの目安になります。動脈硬化とは、血管が硬くなってしなやかさが失われて、血管がつまりやすくなった状態のこと。
コレステロールや中性脂肪について詳しく知りたい方は「05 肥満を解消すれば検査値が改善」、脂質異常症について詳しく知りたい方は「脂質異常症の食事のきほん」をご覧ください。

●肝機能…AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)
主に肝臓の働きに問題があると、AST(GOT)、ALT(GPT)の値が上がります。これらの項目が健康診断でひっかかった時は、必ず医療機関にかかって原因を調べましょう。肝臓病の種類によっては、早めに薬を飲むことで大きな治療効果が期待できるからです。
γ-GTは主にアルコールによる肝臓の障害や、胆汁(肝臓が作る液体。肝臓から胆管という管を通って十二指腸にいく)の流れがスムーズでない時に上昇します。

●糖代謝…空腹時血糖値またはHbA1c
いずれも糖尿病という病気の診断に使われる検査値です。糖尿病は血液中のブドウ糖が多くなりすぎる病気で、血液中のブドウ糖の濃さを「血糖値」と呼びます。「HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)」は、過去1、2カ月の平均的な血糖値がわかる項目です。
HbA1cについて詳しく知りたい方は「03 糖尿病かどうかを調べるHbA1c、空腹時血糖」、糖尿病(2型)について詳しく知りたい方は「糖尿病(2型)の食事のきほん」をご覧ください。

尿検査で腎臓病、血圧測定で動脈硬化による病気のリスクを判定

では、尿検査や血圧測定からは、どのようなことがわかるでしょうか。
尿は体の中でいらなくなったものを捨てるために、腎臓で作られます。ですから、尿を調べると腎臓の病気や体全体の調子がわかります。
一方、血圧測定では動脈硬化による病気のリスクが分かります。

●尿たんぱく
尿に含まれるたんぱく質を「尿たんぱく」と呼びます。尿たんぱくが陽性の場合、腎臓の病気や、糖尿病のような全身の病気による腎臓の障害などが疑われます。
腎機能検査について詳しく知りたい方は「02 健診で腎機能の状態を知ることが重要です」、腎臓病について詳しく知りたい方は「腎臓病の食事のきほん」をご覧ください。

●尿潜血(血尿)
血液が混じった尿を「尿潜血(血尿)」と呼びます。尿潜血(血尿)が陽性の場合、腎臓や尿の通り道に病気があることが疑われます。
腎機能検査について詳しく知りたい方は「02 健診で腎機能の状態を知ることが重要です」、腎臓病について詳しく知りたい方は「腎臓病の食事のきほん」をご覧ください。

●血圧
「血圧」とは、血管の壁にかかる圧力のこと。血圧が高い状態が長く続くと、血管にかかる圧力で血管の壁が傷つき、動脈硬化が進んでしまいます。血圧を調べることで、心筋梗塞や脳卒中など、動脈硬化が引き起こす病気のリスクがわかります。
血圧について詳しく知りたい方は「04 血圧で動脈硬化による病気のリスクが分かります」、高血圧について詳しく知りたい方は「高血圧の食事のきほん」をご覧ください。

身長・体重・腹囲から肥満度、メタボかが分かります

身長や体重、腹囲を測ることで、肥満やメタボリックシンドロームに当てはまるかどうかが判断できます。

●身長、体重
身長と体重を測ると、そこから以下の式で体格指数(BMI)が計算できます。
BMI(Body Mass Index)
=[体重(kg)]÷[身長(m)]÷[身長(m)]
BMIは、肥満度の判定に用いられる国際的な基準。糖尿病、高血圧、脂質異常症などの病気に最もかかりにくいのが22.0で、18.5以上25.0未満が「普通体重」とされています。
普通体重より少なければ「低体重」、多いと「肥満」に。肥満については「05 肥満を解消すれば検査値が改善」「06 肥満解消のポイントは適度な糖質制限」をご覧ください。

●腹囲
日本人の腹囲の基準値は、男性85cm未満、女性90cm未満。腹囲がそれより大きく、かつ、「脂質」「血圧」「血糖値」のうち2項目以上が基準を上回っていると、メタボリックシンドロームに当てはまります。メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態のことです。
2008年から40歳以上を対象に、メタボリックシンドロームに注目した通称「メタボ健診」(正式名称は特定健診)が導入されました。特定健診でメタボやその予備軍とわかったら、管理栄養士や保健師、医師による面接を受けることになります。

<参考>岡田定 著「リモート診療 病院に行きたくない時の名医との33のQ&A」(主婦の友社)

<参考>矢冨裕、野田光彦 編著「健康診断と検査がすべてわかる本 改訂」(時事通信社)

文/おいしい健康編集部









現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長
前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田定先生

1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020 年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長 岡田定先生

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